男たちの戦い
中学生の頃の話だ。
僕は田舎に住んでいた。
当時、田舎はヤンキー全盛の時代だった。
今では信じられないが、ボンタン狩りという行為がふつうに行われていた。
ボンタンとは鳶職の人が履かれるような太いズボンのことである。
ボンタン狩りとは、その太いズボンを履いている学生を襲撃し、ズボンを奪う行為である。
誰得としか言いようがない。
雰囲気的には魁!!クロマティ高校のような感じだ。
そんな時代であったので、中学校間の争いも絶えなかった。
ある日、隣町の中学が僕が通っていた中学を襲撃しに来るという噂が流れた。
一体何のためにそんなことをするのか?
今となってはそう思うのだが、残念ながら当時は誰もそんな風に考えなかった。
僕の学校のヤンキー君たちは襲撃に備えるという結論に達した。
僕はそういう人種とは距離を置いていたのだが、襲撃の噂が流れてから、「お前も参加しろ」と無理やり参加させられた。
モトダの秘策
襲撃に備えるために、ヤンキー君たちと僕ら一般人は学校の近くの神社で撃退の訓練をすることになった。
とはいえ、どうやって撃退すればいいのか解らない。
時間だけが過ぎていく。
意味もなく神社で中学生が集合しただけになってしまっていた。
そこにモトダが現れた。
モトダは根本的にはいいヤツなのだが、行動原理が解らない人間であった。
モトダは僕たちに「武器を用意するから数日よこせ」と言って、去って行った。
僕たちは一抹の不安はあったが、モトダに全てを託すことにした。
そして数日後、また神社に呼び出される。
一般人の僕は本当に勘弁して欲しいと思ったが、自分の中学を守ることは英雄的行為であるという雰囲気が漂っていたので、取り敢えず参加した。
神社にはモトダが待っていた。
そして自慢の武器が並んでいた。
...ヌンチャクだ。
モトダ、お前はなぜこの武器が最適だと思ったんだ。
確かに流行ってはいたが、お前、これは琉球古武術の武器じゃないか。
しかもヌンチャクは人数分なく、かつボロボロであった。
取り敢えず、ヤンキー君たちはヌンチャクの練習を始めた。
一般人の僕はヌンチャクに触ることも許されない。
練習を見ていて気付くのだが、そもそも危ない。
まずいないと思うが、暴漢を撃退するときにはヌンチャクはおすすめしない。
程なくして、「ウッ!!」と言って、背中を押さえてうずくまる者が現れた。
「マンボでも始まったのか」と思ったが、意図せぬ同士討ちが起きていたのだ。
またボロボロのヌンチャクの接合部分が外れて、柄の部分が所々に飛んで行き、誰かに当たるといった光景も広がっていた。
僕は一体何を見せられているのか。
結果として襲撃の噂はガセネタだったことがわかった。
平和な日常が続いた。
一般人の僕は巻き込まれなくて本当に良かったと安堵した。
しかしその平和の影には、ヌンチャクで学校を守ろうとして怪我をした中学生がいたことも決して忘れてはならない。
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