男の闘い 〜ニョーヨーク・ニョーヨーク〜 【前編】
愛する娘が動物園に行きたいと主張する。
ときは3連休の最終日であったが、「象さんが見たい」と上目遣いで言われては行かざるを得まい。
娘には超イージーモードの僕に奥様は完全に呆れている様子だった。
娘が僕の小指をへし折ろうとしても許せてしまうほど溺愛しているのがいけないのだろうか。
まぁあれだ、連休だし混んではいるだろうが、最終日なのだからまぁ何とか入園することはできるだろうと高を括っていた。
しかし僕はすぐにその見積もりがどんぶり勘定すぎることを知るのであった。

動物園が近づくに連れ、「人口密度が変わったのか?」と錯覚を覚えるほどの道路状況になってくる。
たかが右折をするのに2ターンも待たなければならないこともある。
まぁそれでもさ、動物園って駐車場が多いから、まぁ何とかなったりするんじゃないのかと思うわけだが、すぐにそれが過ちだということに気付かされるのであった。
動物園の近くの駐車場はもちろん満車であり、それにも関わらず入口には数台が待っている状況であった。
想定内想定内。
平日だってあそこは止められない場所だ。
この動物園にはほかに2個所駐車場がある。
特に最奥部にある駐車場は満車になったのを見たことがないほど広いのだ。
そして連休の最終日にわざわざ疲れることをしようとする愚か者がそうそういるわけはないではないか。
僕は愛する娘に動物園で何が食べたいか聞いた。
「何でも食べていいよ〜」という僕の甘々な言葉に奥様は完全に呆れている様子だった。
娘が運動会の徒競走で一等賞をとったあと僕のところに走ってきて「パパ、臭い」と言っても許してしまうほど溺愛しているのがいけないのだろうか。
僕は混雑具合を不安そうに眺める家族を尻目に動物園脇の道路に進路を取り、第2駐車場へと車を走らせた。

何やコレ?
小道に入ると道路の左側が路上駐車の車でコンプリートされているのが見える。
びっしりだ。
「いやこれ、もう車出せないだろう?」というくらいに詰まっている。
そして前を見れば道も大渋滞になっていることが解る。
2、3分で数メートルしか進まない。
このままでは最奥部の駐車場まで10時間はかかってしまう。
だいたいこの動物園自体があと5時間で閉まってしまうのにそれでは意味がわからなさすぎる。
これでは子どもたちが動物園を楽しむことができないではないか。
ならば仕方がない。
僕は笑顔で家族にこう言った。
「ここは俺に任せてお前らは先に行け。」

家族は戸惑っていたが、僕の「馬鹿野郎、俺の犠牲を無駄にするんじゃねぇ」という言葉に意を決したのか、ルンルン気分で遠ざかっていた。
戸惑っていたように見えたのは幻だったのだろうか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
そしてここから漢の闘いが始まるのであった。