まる猫の今夜も眠れない

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初デートの思い出 (後編) [眠れない大人のための子守唄]

※ この内容は以下の記事の続きです。

またこの記事の一部は当時を知る人達の証言をもとに書かれています。

maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp

 

初デート前日

同じ保育園に通っていたアズミちゃんはみんなのアイドルだった。

アズミちゃんは大きな赤い帽子をかぶっていて、保育士さんから赤ずきんちゃんみたいで可愛い」と言われていた。

彼女と一緒にいたいがために保育園児が見苦しい戦いを常に繰り広げていた

幸運にも僕はそんなアイドルのアズミちゃんとデートできることになった。

いらすとや (www.irasutoya.com)

 

ブレーキが壊れたスポーツカーのように前日から僕のテンションは上がり続けていた。

もう「ウホウホウホウホ」と言っていた。

完全にチンパンジーである。

いや、チンパンジーに悪い。

チンパンジーのほうがまだ理性的だっただろう。

突然、「ムキョー」という奇声を発したかと思えば、唯一の持ち歌である細川たかしさん北酒場を歌い出す始末だった。

デートがどういうものかを知らなかったが、アズミちゃんと日曜日を2人で過ごせると考えただけで恋のエントロピーが増大していく

一緒に暮らしていた祖父母は僕がひきつけをおこしているのではないかと不安そうにしていた。

 

初デートの朝

父親にどこに連れて行ってくれるのか聞いたのはデート当日だ。

父親は隣町にある水族館に連れて行ってくれると言った。

ナイスゥー!!!

いらすとや (www.irasutoya.com)

さすがだ。

女心を理解している。

これからは父上と呼ばせていただきたい。

幼稚園児の僕はそう思った。

僕はおもむろに立ち上がり、洗面所に向かう。

手には工作用のハサミを持っていた。

そう、僕は自分の髪型が気に入らなかったのだ。

そして何としてでもアズミちゃんに気に入られ、彼女を僕だけの存在にしたかったのだ。

そうするには自分で格好良くするしかない。

そう思い、僕は自分の髪にハサミを入れた。

ぽとりと前髪が全て洗面台に落ちる。

次の瞬間、ウォーズマンのような頭になった自分が鏡に映る。

ウォーズマンの頭の形といっても解らない人は解らないと思う。

要するにヘルメットのような髪型になったのだ。

僕は「これはやばい」と思い、父親、いや父上がふだん何をしているか考えた。

そしてカミソリを持ち、何とか先程のミスを取り戻そうとした。

そこで父上が洗面所に入ってきて、僕の異変に気づいた。

右の眉毛が半分なくなっていた。

 

初デート

水族館でアズミちゃんが待っていた。

いつもの赤い大きな帽子をかぶっていた。

赤ずきんちゃんのようで可愛い。

アズミちゃんは僕に会うなり、屈託のない顔で質問をした。

「まる猫君はどうして髪に何かを巻いているの?」

そこまで赤ずきんちゃんなのか。

僕は髪にバンダナのようなものを巻いていて、前髪がないのを隠そうとしていたのだ。

仕方なく「髪がボサボサだからだよ」と答える。

アズミちゃんは質問を続ける。

「まる猫君はどうしていつもしていないメガネをしているの?」

僕は眉毛を書いてもらって、その上で大きめのメガネをして眉毛の欠損を隠そうとしてたのだ。

仕方なく「魚をよく見るためだよ」と答える。

アズミちゃんは質問を続ける。

「まる猫君はどうして顔に絆創膏を貼っているの?」

どうも眉毛を半分剃り落としたときに、顔を傷付けたらしかった。

だから絆創膏を貼るより仕方なかったのだ。

「アズミちゃんを独り占めするためだよ。」

そんな風に言うことが出来ない僕は、涙を滲ませながら怪しい風体で水族館を意中の人とまわったのだった。

 

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