※ この内容は以下の記事の続きです。
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp
気まぐれなKISS
僕のもとに妖精のように美しい女性がやってこられた。
ナチュラルな金色の髪、そして青い瞳を見れば日本の方ではないことは明らかだ。
美しいけれども、冷たい感じはしない。
寧ろ笑顔は弾けるようで、見たもの全てを虜にしてしまうほど魅力的だった。
「今までの説明でご不明な点はございませんか?」
日本語らしくないイントネーションではあったものの見事な発音だ。
僕は「先程の店員さんに充分に説明をしていただきました、ありがとうございました」と答えた。
妖精のように美しい女性は「私からもよりよいプランを提案させていただくために、いくつかお聞かせください」と続けた。
プランの「ラ」はLの音を出されていた。
Lの音は舌の先を歯の裏に付けて出すものであり、日本語にはない音だ。
流石だ。
そして敬語も完璧だ。
日本語の敬語は本当に難しい。
この妖精のように美しい女性はおそらく努力に努力を重ねてここまで完璧な日本語を習得されたのだ。
身も心も美しい。
僕は人としての徳の高さに感動した。
おそらく彼女には欠点の1つもないのだろうと僕は思った。
そして彼女はこう続けた。
今日はKISS変でしたよね?
どういうことだ?
僕には妻子がいるが、いつの間にそこまで僕たちの関係は進んでしまったのか。
思わず奥様に謝罪をしたくなったが、ついさっき初めて話した女性だ。
彼女は続けた。
今のKISSはどこがお気に召しませんでしたか?
どういうKISSが欲しいですか?
わかった。
彼女は機種を発音しようとするとKISSになってしまうのだ。
信じられないかもしれないが、このKISS事件は目の前で実際に起きている。
完璧と思われた彼女にもまさかこんな個性があったとは。
また困ったことに逆に魅力的なのだ。
ドキドキする。
彼女は続ける。
私のKISSはちょっとだけ古いタイプなんです。
最近はこういうKISSがメインです。
駄目だ。
どうしたらいいんだ。
説明に集中できない。
この2つのKISSだとどちらが好きですか?
気まぐれだ。
気まぐれすぎる。
突然のKISSに心が奪われる。
眼の前の女性が魅力的すぎるのが問題だ。
結局ドキドキして最後まで説明が入ってこなかった。
それでは次回来店されるときまでこのKISSは取っておきますね。
彼女は店の外まで付いてきてくれて、僕に深々とお辞儀をしてくださった。
来週僕は彼女からお目当てのKISSをもらいに行く予定だ。
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