燃え上がる恋
※この記事は以下のものの続きです。
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp
学生の2人は日に日に相手を強く求めるようになっていった。
何をするにしても、携帯電話を離さず、時間があればメールをしていた。
僕たちは嬉しいことや楽しいことがあると、何時だろうが関係なくメールを送りあった。
寧ろ、深夜にメールが来たほうが嬉しくなったりした。
この世界の片隅で、智美ちゃん(仮名)と僕だけが起きているようなロマンチックな気分になれた。
煩わしいと思うことなど一切なかった。
バイトが終わったら電話する約束をして、辛いバイトを乗り切ったりした。
若者は恋することで成長できるのだ。
彼女の告白
僕たちの気持ちはどんどん盛り上がっていった。
幾度となく智美ちゃんから卒業後の話が話題に上がった。
彼女から「一緒に暮らしたい」という話が出たときはとても嬉しかった。
その時点で僕たちは1度も会ったことがなかったのに、である。
このとき、間違いメールから1月ちょっとしか経っていなかったのに、である。
愚かな僕は「そうなると結婚もあるなぁ」と考えるようになった。
僕たちはブレーキの壊れた暴走特急のように、恋心という石炭を燃やして進んでいった。
しかしある晩、彼女から「一緒に暮らす前に、どうしても言っておきたいことがある」と言われた。
いつになく真剣だった。
今となっては無責任に感じるが、当時ののぼせていた僕は「彼女が抱えていることが何であれ、支えられることは支えたい」と思っていた。
しかし、彼女が口にしたのは予想を遥かに越えたものであった。
私、霊が見えるんだ〜。
現実世界が僕に「おかえり〜」と言って手を振っている。
頭に登った血液がシューッと体の下の方に降りていくのを感じる。
けれども若者の恋は往生際が悪い。
智美ちゃんの良いところをたくさん思い浮かべて、熱量を取り戻そうとする。
取り敢えず、今後の話をするために、僕たちは繁華街で会う約束をした。
Hello, Goodbye.
僕たちは互いの学校がない日を選んで、繁華街の素敵なカフェで会う約束をした。
僕は相手を待たせるのが苦手なので、待ち合わせの時間よりも前にカフェについて珈琲を飲んでいた。
智美ちゃんへの熱も少しずつ戻ってきていた。
そして約束の時間になると、智美ちゃんがやってきた。
写真で見るよりも、智美ちゃんは華奢で可愛らしかった。
智美ちゃんも僕を見付けると、笑顔でこちらに向かってきた。
「イメージ通りだね」と智美ちゃんは言う。
そして彼女もキャラメル系の珈琲を頼み、久しぶりにあった恋人同士のように会話が始まった。
会えなかった時間を取り戻すように、言葉が紡がれてゆく。
けれどもしばらくして彼女はこう言った。
「う〜ん、何て言うか、守護霊同士が合わないね。」
そう言うと、智美ちゃんは珈琲を飲み干して続けた。
「やっぱ、無理だわ、観光して帰るね〜。」
それから彼女は僕の視界から消えていった。
もしかしたら智美ちゃんは僕を傷つけまいとして、こういう行動に出たのかもしれない。
いつしか熱が冷めてしまい、自分が汚れ役になることで、恋を終わらせたかったのかもしれない。
彼女は優しい女の子だったから。
1つ言えるのは、「僕の守護霊様、ありがとうございます」ということだけだった。