※ この内容は以下の記事の続きです。
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp
キッチンから愛を込めて
ミナちゃんも僕もバイトがない日に料理を作ってもらう約束をした。
ちなみに僕は調理場でバイトをしていたので、簡単な料理は作れるが、自分のために料理をするのは面倒くさく、滅多に自炊をしなかった。
ふだんから料理をされる方は解ると思うが、やっぱり人に料理を作ってもらうと嬉しいのだ。
大学が終わると、僕は先に自分のアパートに帰り、ミナちゃんはスーパーに向かった。
一緒にスーパーに行けばいいじゃないかと思うかもしれないが、僕たちは交際をしているわけではないし、何よりミナちゃんが作る料理を内緒にしたがったのだ。
ちょうど部屋を片付け終えたあと、ミナちゃんが買い物袋を抱えて僕のアパートのチャイムを鳴らした。
小さな冷蔵庫に材料を入れて、ミナちゃんはエプロン姿になった。
可愛いじゃないか。
そもそもミナちゃんはいい子だし、小動物のような可愛らしさがあった。
う〜ん、惚れそうだ。
ミナちゃんをずっと眺めていると、彼女は恥ずかしがり、「こっち見ないでよ」とふくれた。
いや、もうキャント・ストップ・マイ・ハート。
これは流れによっては好きになりますね。
ミナちゃんは包丁を持つ手で汗を拭いながら、「料理初めてだから上手くいくかな」とはにかんだ。
嬉しいなぁ、ミナちゃんは僕のために料理に挑戦してくれているんだ。
そう言えばミナちゃんはお手伝いさんがいる家に住んでいるらしいし、料理の経験もないのも不思議ではないよな。
僕もミナちゃんに何かお返しをしないといけないなぁ。
...料理初めて?
トイレから愛を込めて
ミナちゃんが作ってくれたのは肉じゃがだった。
僕は深々とミナちゃんに頭を下げた。
本当に嬉しかったのだ。
僕が感激して少し涙ぐんているのを見て、ミナちゃんは満足そうに調理器具の片付けを始めた。
いただきま〜す。
一口で味の向こう側に連れていかれる。
ふと、キッチンをみると、ウォッカが置いてあった。
ミナちゃん、肉じゃがのレシピにあるお酒って料理酒か日本酒のことだと思うよ。
確かに、パスタなどでウォッカを使う料理はある。
でも肉じゃがで使うというのは画期的ではないだろうか。
そもそもミナちゃんの使ったウォッカの量がかなり多かったことも独創的な味につながる一助となった。
おそらくウォッカ以外にも良かれと思って使った隠し味があるはずだ。
隠し味が隠れていない。
ただ僕は曲がりなりにもフェミニズム学の講座を受講している男だ。
ミナちゃんが料理を作ってくれたことに感謝こそすれ、不快な顔などは一切見せることはしなかった。
心のなかで僕は思った。
たとえ完食がどんなに遠くとも
どんなに自分の一口が小さくても
食べ続けさえすれば
きっといつか完食できる
ミナちゃんは片付けを終えて、僕の隣の椅子に腰かけた。
そして「じゃあ、私もいただきま〜す」と言って、肉じゃがを口に運んだ。
オェェェエエエェェェッ!!!
もしかするとミナちゃんはOH, YEAH!!!と言ったかもしれないが、口を抑えてトイレに駆け込んだ。
しばらくして僕はトイレに行き、「ミナちゃんのことが気になり始めている」ことを伝えた。
ミナちゃんはトイレの中から、「私のことは心配要らないから、残りを食べていいよ」と弱々しい声で僕の求めていない返事をしてくれた。
※ 買いおきしたい備蓄用肉じゃがです。
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