平日のお休み
幸運にも平日に休みがもらえた。
朝食後の二度寝から目覚めて、服を着替え、到着時間も確認しないままに地下鉄に乗った。
免許更新をするために運転免許試験場に行くためだ。
地下鉄を降りてから試験場までは2キロほどあったが、時間もたっぷりあったので、そこまで歩いてくことにした。
Bluetoothイヤホンでお気に入りの芸人さんのラジオを聞きながら、ご機嫌な気分で街を闊歩する。
知らない街を歩くのは楽しい。
試験場は平日だというのに凄い人で、座る場所もないくらいだった。
しかし受付や写真撮影などの分業が完璧になされていて、到着してわずか10分足らずで全ての処理が完了して驚いた。
何という手際の良さだろう。
僕はその芸術的な無駄の無さに感動すら覚えた。
あとは講習をしっかり受けて、更新された免許を受け取って帰るだけだ。
余談であるが、僕は手ぶらで運転免許試験場に行ったのだが、これは大抵の場合やめた方がいい。
車で運転免許試験場に行く場合はいいのだが、僕のように徒歩で行く場合は注意が必要である。
免許更新の際には免許だけではなく教本も一緒にいただける。
この教本を入れる袋のようなものはあったほうが便利だと思われる。
もしかするとお住まいの地域によって状況は変わるかもしれないが、それでも手ぶらは避けたほうが良さそうだ。
話を本題に戻す。
講習室の前には人だかりができていた。
当然、座席には座ることができない。
「結構待つかな」と思っていると、定刻よりも少し前に扉が開いた。
全く無駄がない。
ここまで15分というところだ。
この運転免許試験場のシステムは完璧だ。
そして講習室では一番うしろの席に座り、携帯電話の電源を切った。
僕は基本的にちゃらんぽらんな人間であり、世間知らずで常識がない。
しかしながら、こういう講習のビデオなどは全集中して見るタイプだ。
何だったら見た内容に関してレポート数枚くらいなら書くことができる。
ビデオは伝えられるべき内容がコンパクトにまとまっていて意図がわかりやすく、事故を起こしてはいけないという気持ちがより高まった。
ビデオには手話による解説もなされており、耳の不自由な方に対しての配慮もあった。
また講師の先生の話もわかりやすく、講習時間が短いくらいに感じた。
ただ少し気になったこともあった。
決して文句ではない。
くだらない文句ほど建設的でないものはないということは理解しているつもりだ。
少し気になったのは講習のビデオに関することだ。
ずっと画面上方に「映像提供:〇〇大学〇〇研究科〇〇センター」のような文字が映し出されている。
あれはビデオの冒頭などで紹介するのでは駄目なのだろうか?
法律上、映像を使っている間は常にスクリーンに映しておかないといけないのだろうか?
それだけなら別にいいのだが、救助の仕方を学ぶコーナーでは「新型コロナウイルスに感染する恐れがある場合はマスクなどで対応しましょう」的な気遣いテロップもスクリーン中央より少し右に映し出された。
さらに本編に関するデータをグラフ化したものが画面右側に現れた。
多い。
情報量が多すぎる。
全集中していなかったら全てのデータを処理するはできなかっただろう。
もしや!
これはまさか見る側の集中力を高めるという工夫なのだろうか?
情報量多めの内容にすることで、否が応でも講習を受けている人に集中させるという狙いがあるのかもしれない。
僕は素晴らしさに感動を覚え、心の中で拍手をした。
完璧な運転免許試験場であり、完璧な講習ビデオだった。
血の通った工夫は人を幸せにさせるなぁ。
そう思いながら、僕は運転免許試験場を後にした。
このあとに不思議な体験をするなんて予想だにせずに。
※ まずは免許取得という方は問題をこなして理解を深めよう。
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