まる猫の今夜も眠れない

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差し伸べた手 [哀しみの実話] (ボブの中)

免許更新のあとで

先日免許更新のお知らせが届いた。

そして幸運にも平日に休みがもらえた。

これはもう行くしかない。

 

※ 運転免許試験場での話は以下の記事から読むことができます。

maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp

 

というわけで免許更新に行った日の帰りの出来事だ。

大きな公園を差し掛かったときに60歳くらいのおじさんが独りでシーソーに乗っていた。

そして恵方巻きを食べるかのようにずっと大きなワッフルを頬張っていた。

遠くで小さな子供とそのお母さんらしき人が滑り台で遊んでいるのをおじさんは眺めていたのだろうか。

僕は「いったいどういう心境になればおじさんのように大きなワッフルを頬張りながらシーソーに乗れるのか」と考えた。

しかしどういう風に考えてもおじさんの気持ちが解らず、僕は気を取り直してイヤホンを耳につけてラジオを聞き始めた。

それはBluetoothイヤホンではあったが、長いコードがついていて、右耳から左耳にそのコードが伸びているように見えた。

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地下鉄の駅に着き、プラットフォームまでの長い長い通路を歩いた。

僕は真空ジェシカさんのラジオを聞いていて、笑いをこらえながら歩いていた。

すると前からだいぶお年を召された女性が歩いてきた。

その女性はふらっとよろけると、ずるっと前に転ばれた。

幸いにして頭は打っておらず、意識ははっきりしていた。

僕は「ここは助けるのが人間ってもんだ」と思い、おばさま(「おばさまA」とする)のところへ歩みを速めた。

横たわっていたおばさまの前には別のおばさま(「おばさまB」とする)が駆けつけていて、声をかけて起こそうとしていた。

僕は「大丈夫ですか?」と言いながら、おばさまAに手を差し伸べた。

おばさまBは「男の人なら起こせるでしょ、ほら頑張って」と声をかけてきた。

おばさまAは僕の顔をじっとのぞき込み、手を取ろうとしなかった。

僕の差し伸べられた手はつながれぬままだった。

大変だ、おばさまAは手を怪我したのかもしれない。

僕はそう思い、おばさまAのことを心配して「手を動かすと痛いんですか?」と聞いた。

おばさまBも心配そうに「駅員さんを呼ぼうか?」と声をかけていた。

するとそこへ大学生(もしかすると高校生かもしれない)の爽やかな青年が通りすがり、「あらら、大丈夫ですか?」とおばさまAに手を差し出した。

 

おばさまAはすっと大学生の青年の手を取り、彼に抱き抱えられて起き上がった。

 

そして大学生の青年の肩をかり、階段まで歩き「もう大丈夫」と言って去って行った。

 

ああ、僕はおばさまAに「こいつじゃない」と思われたのか。

僕は哀しい気持ちになって、トボトボとプラットフォームまで歩いた。

「大きなワッフル...あんこの乗ったワッフルが欲しいなぁ。」

そんなワッフルがあれば、シーソーに乗って食べたいなと思いながら。

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※ 美味しいワッフル。

 

※ よろしければ以下の記事もどうぞ。

maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp

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