空白の2日間 (1日目)
僕は学校に遅刻しそうになるとフランスパンを口にくわえながら玄関を飛び出し、曲がり角で憧れの馬とぶつかりケンタウロスになるほどおっちょこちょいな人間だ。
したがって予約投稿を忘れることはある。
ただこの2日間記事を投稿しなかったのは理由があるのだ。
ことの発端は2日前の朝である。
出勤をしてしばらくすると自分の感覚と体の動きがずれている感覚に陥った。
浮遊感とも思えるような感覚である。
これはまずい。
こういう感覚の時は得てしてよい状況ではないことは知っている。
しかもその日は人前でする仕事が3時間ほどあった。
念の為に奥様には「今日は家の手伝いが出来ないかもしれません」とLINEをしておく。
時が過ぎるに連れて、腹痛と吐き気と頭痛が強くなり、昼食も食べず飴ばかりをなめていた。
僕の凄まじい飴の消費スピードを見て、おそらく周囲の席の同僚は妖怪飴なめというあだ名で僕のことを呼んでいただろう。
量も1袋半 (約300円分) ほどなめていた。
飴のなめ過ぎは健康に悪いのは知っているが、今すでに僕の健康状態が悪いときはそんなことは言っていられない。
それからすっくと席を立ち、人前でする3時間の仕事現場に向かった。
僕の頭の中にはアルマゲドンのテーマ・ソングが流れていたことは言うまでもない。
ここで冒頭の文に戻る。
僕は学校に遅刻しそうになるとフランスパンを口にくわえながら玄関を飛び出し、曲がり角で憧れの馬とぶつかりケンタウロスになるほどおっちょこちょいな人間だ。
この文が素晴らしいと感じられる人はおそらく素晴らしい頭脳の持ち主だと思うが、世の中のマジョリティーにとっては理解不能な文であろう。
僕はこの文のようなことを3時間人前で話していたようだ。
まったく見上げたプロ根性だぜ。
そして僕は仕事を終えて自分の席に戻った。
僕の憔悴具合を見て、上司も「定時前だけと帰れ」と言ってくれた。
同僚も「何かよくわからないけれどうつされた嫌だから帰れ」、「そばにいると不気味だから帰れ」、「息遣いが気持ち悪いから帰れ」などと優しい言葉をかけてくれたので、僕は定時より1時間早く職場を出た。
まったく温かい職場だぜ。
そして僕は何とか家に帰り、身の回りのことをしてベッドに横になった。
そして気絶に近い状態で僕は1時間ほど眠る。
目を覚ますと熱が37.8°まで上がってしまっていた。
発熱もさることながら、腹痛と吐き気に常に苦しまされた。
水分をとらなくてはと思い、かろうじて2階へと足を運ぶ。
優しい奥様は僕が怠けすぎないようにと思ったのだろう。
洗濯物をたたむことや皿洗いなどの家事を残しておいてくれたことには涙が溢れてきた。
これが空白の2日間の1日目である。