あなたがいてくれることに感謝
何気なく生きていると日常がふいに彩りのないもののように思える時がある。
そこにあるものを当たり前だととらえてしまうからだろう。
もしかすると昨日までの僕も心のどこかでそんな風に考えていたかもしれない。
けれどもその「当たり前」は決して「当たり前」ではない。
そのありきたりの日々は陰ながら僕たちを支えている誰かがいてくれるおかげで成り立っている。
誰かが汗を流したり、歯を食いしばってくれる努力の結晶なのだ。
今この瞬間僕は自分を取り巻く全ての人、大切な家族、仕事仲間、読者様に感謝したいと思っている。
そんな風に思えるような不思議で素敵な出来事を今日僕は経験した。
午後7時を過ぎたので、同僚との話を切り上げ、僕は帰り支度をした。
そして退勤の入力を済ませて、仕事場をあとにする。
駐輪場に着くと、大きなリュックサックの中から自転車のライトを取り出して、ハンドルの横に付ける。
それからライトを点けて、自転車のチェーンを外して、ペダルをゆっくりと漕ぎ始める。
先日は4月にも関わらず30℃近くだったのに、今日は少し肌寒く感じた。
けれどもその寒さで身体がキュッと締まる感じがして逆に心地よかったりする。
1月前はこの時間になると真っ暗だったのに、外はまるで夕暮れどきのような明るさだった。
10分ほど自転車を漕いだのち、大きな交差点に着いた。
僕の前には自転車に乗った女性と男性が信号待ちをしていた。
言葉から察するに海外のかただと思うが、とても仲睦まじそうに見えた。
そして信号が青に変わったのでその2人は僕の前をゆっくりと進んでいった。
進行方向が同じだったために僕も後を追いかける形になった。
ここで僕は素敵な体験をすることになる。
自転車を漕いでいるととても素敵な香りが立ち込めるのに気付いた。
どうやら香りの出所は僕の前で自転車を漕いでいる女性からのようだった。
初めはその女性の香水の匂いだと思ったが、どうも様子が違う。
僕は何気なく女性の手を見てみた。
女性は芳香剤を持っていた。
自転車を乗るときは片手運転をしてはいけないのだが、このときは気付かなかった。
なぜ野外で芳香剤を持っているのか?
単純に別の場所に芳香剤を移動させるのならば、蓋は開けないでいいのではないか?
わからないことだらけの状況であったが、女性は僕の家の近くまで僕の前を自転車で走ってくれたのだった。
彼女のおかげで僕は家に着くまでずっと素敵な匂いに包まれながら家に帰ることができた。
彼女のおかげで僕は日常をありがたいと感じることができ、自分を取り巻く全ての人、大切な家族、仕事仲間、読者様に感謝したいと思った。
ありがとう、芳香剤を持った女性。
家に着くと僕はすぐにトイレに行った。
彼女の持っていた芳香剤がトイレ専用のものだったからかもしれない。
本当に条件反射とは恐ろしいものである。
※ トイレ、あの素敵な場所。