Face ID
年末に携帯電話を換えた。
新しい携帯電話さんはデザインや色など正直とても気に入っている。
機能も優れていて非の打ち所がない。
早速Face IDなるものを設定してみた。
説明するまでもないと思うが、Face IDとは携帯電話の画面に視線を向けるだけでロック解除や支払いなどができてしまうという優れた機能である。
使ってみるととても便利で、この機能を作られた方に感謝をしたい気持ちで溢れた。
それまではパスワードをポチポチと打ち込んでいたものが、ものの1秒で携帯電話のロックが解除できるのだ。
そして仕事の休みに入った。
自分では気付かなかったが仕事のストレスがかなり溜まっていたらしく、飲み会ではビールや酎ハイを3リットルほど飲み、出てきた料理をペロリと平らげた。
2次会でも猛烈な勢いで料理を食べた。
昼夜逆転の生活になり、真夜中に甘いものを食べたりしていた。
自堕落がとても心地よく、自制心は一切働くことはなかった。
そして休みも終わろうとしていたある日、僕はあることに気がついたのだ。
Face IDが機能しない。
なぜだ?
なぜこんな高性能な携帯電話さんが急に機能を失ったのか。
そして僕はある答えにたどり着いた。
顔がパンパンだ。
目つきすら変わっている。
あの国民的なヒーローのような顔になっている。
実際に鏡で自分を見てみると、見たことがない顔がそこにあった。
爆発するんじゃないだろうか。
そんな風に考えてしまうほど、僕の顔は膨れ上がっていた。
目なんか 33 みたいになっている。
(33は目の形だ。)
体重自体は増えていない。
むくんでいるのだ。
宇宙の膨張速度よりも速く僕の顔がむくみ散らかしていた。
それにしてもさすが僕の携帯電話さんは有能だ。
このような微細(?)な違いを見抜いているのだ。
改めて自分の携帯電話さんを愛おしく思った。
そしてFace IDが機能しない日が続いた。
自分が悪いのだが、とても不便だ。
かといって再設定するのは億劫だ。
僕はそういうことができないタイプなので、再びパスワードをポチポチと入れていた。
そんなある日、空腹に耐えられず、ガーリックフランスを頬張っていた。
本当は明太フランスのほうが好きなのだが、あいにく売り切れであったので、長い長いガーリックフランスを購入したのだ。
そしてその長い長いガーリックフランスを口にくわえながら、ニュースでも見ようかと携帯電話をおもむろに覗き込む。
Face IDが機能した。
僕の携帯電話さんは優秀だ。
デザインが美しく、機能に優れているだけではなく、笑いさえも理解しているのだ。
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