秋、君は去った
はにかんだ君が僕の傘の中にいた。
なつかしい歌を君は口ずさんでいた。
下戸のくせにあんなにお酒を飲むからだよ。
ガードレールに腰掛けて君は夜に歌う。
でてるよ、と君は囁いた。
手で触れると壊れてしまいそうな君。
いつでもそばにいたい。
まばたきするのも忘れて君を見つめていた。
すきだと言って抱きしめた。
はめをはずした後、君は眠いと訴えた。
なで肩の僕の首に手を回した。
げほげほと咳き込んだ僕に君はおぶさった。
がんばってね、と君は言う。
でてますけどね、と君は耳元で言う。
手を君の太ももの下に通す。
いつまで経っても君が好きだ。
真夜中の街を君をおんぶしながら歩く。
すぅすぅと肩の後ろから寝息が聞こえる。
はれた日に公園で君と会った。
なびく君の髪を眺めていた。
ゲートボールがそこでは行われていた。
ガーベラが揺れている。
でてることに気付いてね、と君は言う。
手をつないだら怒るかな?
意を決して君と手をつなぐ。
まずすることがあるでしょ、って君は言う。
するりと僕の手は解かれた。
はじめてのドライブデート。
なのに君は浮かない顔をしていた。
ゲームのアプリに心を奪われていた。
ガトーショコラの美味しい喫茶店に行く。
でてるんだってば、って君はむくれた。
手を強引につないだことを怒ってるのかな?
いつか許してもらえるかな?
まつげが長くて可愛いな。
ススキの花言葉は「心が通じる」らしい。
はかない恋の終わり方。
なぜだか君は僕のもとを去って行った。
げんきでね、って言いながら。
がっつりずっと出てたから、と言い残して。
でてたって何のことだろう?
てには君をおんぶした感触が残っている。
いまでもまだ好きなのに。
また僕の心は凍えて何も感じなくなる。
すこしも鼻は寒くないのに。
※ 失恋したときに読んでみたい本。
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maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp