ジョーという名の先輩
小学生の先輩にジョーと呼ばれている人がいた。
ただなぜジョーさんなのかが解らない。
もう少し早く生まれていたら、「島村ジョーから取ったのだろうか?」とか、「矢吹丈から取ったのだろうか?」などと考えることが出来たかもしれない。
ただジョーさんは坊主であることがほとんどで、のばしても短めのツンツンヘアになるくらいだった。
だから島村ジョーとも矢吹丈とも似つかないので、その2人のジョーを知っていたとしても由来になっているとは思わなかっただろう。
ジョーの生きざま
ジョーさんは粗暴で、どちらかというとおっかない先輩だった。
ソフト・サッカー部に入っており、レギュラーだった。
ソフト・サッカー部というのは夏はソフトボール部、冬はサッカー部として活動をする部活動で、多分僕の小学校独自の部活かもしれない。
ジョーさんは特にソフトボールでの打撃に定評があった。
そんなジョーさんと委員会活動だったか何かでウサギの飼育小屋の掃除を学ぶことがあった。
委員会の先生はジョーさんの担任らしい人だった。
「飼育小屋に入ったら、まず鍵をかけること。
ウサギが逃げちゃうからな。
ウサギは怖い動物じゃないから、怯えなくてもいいぞ。」
なるほど、確かにそうだな。
先生は確認のためにジョーさんに聞いた。
「ジョー、念のため確認するけれど、飼育小屋に入って最初にすることは何だ?」
昔は教員が生徒をあだ名で呼ぶことがあった。
先生はジョーさんがジョーと呼ばれていることを知っていたのだ。
ジョーさんは「んあ?鍵をかけること。」と敬語もへったくれもなく答えていた。
ジョーさんは先生の言ったことを理解したのだ。
先生は満足して、僕たちは飼育小屋の中に入った。
飼育小屋の中は独特の匂いが立ち込めていた。
ここを掃除するのかと思いながら、外を観た。
何匹かのウサギが校庭を走り回っている。
ジョーさんが鍵を締め忘れたのだ。
先生は「ジョー、何してるんだ!」と怒鳴る。
ジョーさんは「んあ?ウサギ逃げとる!」と大笑いをしていた。
またある日、小学校の一斉清掃が行われた。
クラスごとに所定の清掃区域を掃除するというものだが、同じ清掃区域にジョーさんがいた。
ジョーさんの担任の先生が説明をしている。
「風が強いから取った草をすぐにビニール袋に入れて、袋がいっぱいになったら焼却炉に持っていけ。」
単純な指示だ。
しかし先生は念のため、ジョーさんに復唱させた。
敬語などは一切存在しない日本語であったが、ここでもジョーさんは指示をきちっと復唱することができた。
そして数分後、ジョーさんが地面に積み上げた草が校庭を舞っていた。
先生は「ジョー、何してるんだ!」と怒鳴る。
ジョーさんは「んあ?草舞っとる!」と大笑いをしていた。
僕たちは寸劇を見せられているのか。
あだ名の由来
ジョーさんのあだ名の由来は後日、別の先輩から教えてもらうことになる。
ジョーさんはこちらが予想したことを必ずしてしまう人だった。
先生の注意が前フリになってしまうのだ。
芸人さんが熱湯風呂の前で「押すな!押すな!」と言っていたら、周りの芸人さんは「押さないといけない」ということに似ている。
お約束なのだ。
その特性をジョーさんの友達は理解していた。
だから友達は彼の名字を活かしてジョーというあだ名を付けたのだ。
ジョーさんの名字は安野 (アンノ)だった。
※ 記事内で触れた島村ジョーさんと矢吹丈さんは以下の漫画の主人公です。
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