まる猫の今夜も眠れない

漫画、英語学習、お笑い、ふりかけ、四方山話

一期一会 [短編]

ランナー

つい先日、銀行に行く途中のことである。

どんよりとした空の下を僕は独り歩いていた。

すると僕の横をご夫婦と思われるランナーが通り過ぎて行った。

いらすとや (www.irasutoya.com)

通り過ぎる際に、旦那さんと思しき人が急にこちらを向き、僕の目を見てこう呟いた。

 

ドルガバ。

 

聞き間違いではない。

間違いなく旦那さんはそう言った。

決して攻撃的な口調ではなかった。

出社時の「おはようございます」的な感じだった。

そして僕はそのブランドの服を着ているわけではなかった。

もしかして僕から香水の匂いでもしたのだろうか。

まったく意味が解らない出来事だった。

 

地下鉄のホーム

梅雨時になると、大気が乱れ、そのことが人間の心にも影響を与えるという話を聞いたことがある。

6月に精神的に落ち着かなくなるという人も多いらしい。

この時期になると、僕は不思議な出会いを経験することが多い。

 

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地下鉄のホームで電車を待っているときのことだった。

右隣りにはサラリーマン風の男性が立っていた。

社会的地位がありそうな立派な方だった。

すると男性はくるりと壁の方に体を向けた。

電話でもするだろうと気にも止めなかったが、どうも様子がおかしい。

その男性は壁を舐めておられたのだ。

僕はビクッとなって、2、3歩離れた。

僕が怯えていることに気付き、男性はこう言った。

 

そういうことじゃない。

 

いや、どういうことだ。

日本のサラリーマン社会はこんなにも闇が深いのか。

 

コンビニ

6月のある日、コンビニに立ち寄ったときのことだ。

小腹がすいたので、パンでも購入しようと思っていた。

するとパンのコーナーの前で一人の男性が仁王立ちをしていた。

匠の顔をしている。

パンを睨みつけていたので、コンビニのエリアマネージャーかなと思った。

するとその男性は自分の前に3つのパンを並べて、呼吸を整えた。

そして真ん中のパンを右に、右のパンを左に、左のパンを真ん中にというように、高速でシャッフルを開始したのだ。

マジシャンがカップにコインを入れてやるアレである。

ただしマジックの場合は、コインが思っていたカップに入っていないという驚きがあるが、僕が遭遇したケースではふだん起こらないことが起こっているという驚きしかなかった。

男性はそのあと満足した様子でコンビニをあとにした。

 

パンを買うのも忘れ、僕はコンビニを出た。

梅雨の合間に晴れた空は、どこか少し哀しい感じがした。

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