春なのに
こんばんは、まる猫です。
特に悩みがあるというわけではないのですが、今夜も眠れません。
春ですね。
春は出会いの季節です。
僕も今まで春に素晴らしくない出会いをしております。
今から十数年前のことですが、割と鮮明に覚えています。
今思い出しても、「あれは一体何であったのか?」と不思議に思う出会いでした。
夕暮れ時、仕事の打ち合わせを終えて、家路につくため駅へ向かいます。
春とはいえ、肌寒く、薄着であったことを後悔しました。
「桜はもう散ったのかなぁ?」
そんなことを思いながら、夕日に照らされる街を歩いていました。
落陽にほんのり赤く染められるアスファルトの上を歩いていると、幾つになっても何だかちょっと嬉しい気持ちになります。
「家に帰って、読まずにおいたあの漫画を見て、ゆっくりお風呂に入ろう。」
少しだけ嬉しい気持ちになれたおかげか、帰宅後のプランが次々と湧いてきます。
「読んでいない好きな漫画が家にあることより豊かなことがあるだろうか」と常々思っています。
昔から、嬉しいことがあったときや辛いことがあったときまで、好きな漫画を読まず、家で熟成させているということがよくありました。
「漫画を読むときに何か飲むものがほしいなぁ、家の近くのコンビニでミルクティーでも買おう。」
そんなことを思いながら、地下鉄へ続く階段を降りていきます。
長い階段で色々な人とすれ違います。
当たり前ですが、この人達は僕が今から離れる街に住んでいるわけです。
そして改札を抜けて、地下鉄乗り場までたどり着くと不思議な出会いがありました。
セミ?
気の早いセミが地下鉄乗り場の柱にとまっている?
それもまた素敵ではないか。
しかし、近づいてみると、どうやらそれはセミではなく、ベロンベロンになったおじさんだとわかりました。
おじさんは離れ離れになった恋人同士が再開したかのように強く柱を抱きしめていました。
おじさんは頬を赤く染めていて、気持ちよさそうでした。
カバンはそばに落ちていました。
駅員さんが柱から離れるように優しく諭しています。
まぁセミも人間も色々あるし、嫌なことがあったのかもしれないな、と思いながら、少し離れた場所で地下鉄を待つことにしました。
理不尽なことを会社で言われて、それを飲まなきゃいけなかったのかもしれない。
そうじゃなかったら、こんな割と早い時間に酔っ払っていることなんてないもんな。
そんな風に思い、勝手におじさんに同情をし始めていると、彼は社会に向けたメッセージソングを歌い始めました。
会いたいな〜♪
会いたいな〜♪
会いたいな〜♪
く〜る〜ま〜♪
あのときは若すぎて、その歌詞の意味がわからないまま、地下鉄に乗ってしまい、僕とおじさんの距離は時速数十キロで離れていきました。
そして今、歳を重ねて、色々な経験をし、一つだけ言えることがあります。
歌詞の意味が全くわからない、と。
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp