※ 食事中の方にはやや不適切な内容となっております。
どうぞ、お気をつけて御覧ください。
ハイヒール
その日はとても疲れていて、仕事が終わって家に帰ると、玄関で座り込んでしまった。
一息ついてから、家族のいる場所に行こうと思ったのである。
そしてぼんやりと靴箱を眺めていると奥様のハイヒールが目にとまる。
奥様はふだんはスニーカーかサンダルを履いていて、年に1、2度くらいしかハイヒールは履かない。
僕はハイヒールは犬の落とし物を踏まないようにするためにできたと思っていた。
どこで読んだか解らないが、フランスの宮殿の周りは犬の落とし物だらけで、かかとの低い靴だと足に付いてしまうので、ハイヒールが生まれたのだと思っていた。
ただハイヒールにしたところで、その靴で家に入って、歩き回るわけなのだから、「玄関で靴を脱げよ」と僕はずっと思っていた。
文化的にそういうものではないことは解るが、家の中をそのヒールで歩く方がダメージがデカいだろうと信じてやまなかった。
ところが、信頼できるソースをあたってみると、どうも僕の読んだ本が間違っていたことが解った。
当時、フランスの路上には、犬の落とし物だけでなく、ゴミが散乱していたらしい。
家の2階からゴミを捨てることがあったとのことだ。
まず、犬の落とし物が問題だと思っていた僕の認識が間違っていたわけだ。
そしてその上でハイヒールがなぜ生まれたかというと、足がゴミで汚れるのを防ぐのではなく、スカートなどの服が汚れてしまうのを防ぐためだったらしい。
目から鱗である。
まあそれでも玄関で靴を脱いだ方がいいと思うけれども。
そんなフランスの路上に思いを馳せていると、あっちんのことを思い出した。
あっちんで解らないひとには、クリスマスあつしと言えば解るだろうか。
有名になったときに必要だということで自分のサインの練習をしていたあっちん。
それが行き過ぎて、なぜかダイイング・メッセージの練習もしていたあっちん。
「サヨナラホームラン」を「サヨウナラホームラン」と言っていたあっちん。
修学旅行で、メガドライブを持ってきたあっちん。
リュックの不自然な膨らみで、先生にメガドライブを発見されたあっちん。
体育の時間に転んで出血をしたが、女子から「大丈夫?」と聞かれるまでは何があっても血を拭かなかったあっちん。
人間の記憶は不思議だ。
前回くらいから、もう誰か解らない人がしたことも、あっちんがしたことだと思ってしまっている。
あっちんは1人の人間を超えた存在、意識の集合体になってしまったのだ。
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