まる猫が深夜2時にも関わらず大量の唐揚げを食べているのは、前の夜に仕事で遅くなり家族が先にお風呂に入っているところに帰ってきて、洗面所で家族の会話を何気なく聞いているとその議題が「まる猫の口が臭いのはなぜか」というものであり自棄になっているからというわけではありません。
ええ、違いますとも。
いちばん幼い子供が議長を立派に努めていたからではありません。
あんなにも難しい日本語を話せるなんて感動いたしました。
まず僕の口は臭くありません。
僕の趣味は歯磨きです。
いいですか、臭さとは個人の感想なんですよ?
ある人にとっていい香りが、また別の人にとっては嫌なにおいになるわけです。
だから僕の口のにおいが家族には受け入れられていないというだけです。
そもそもそれは僕の口のにおいなのですか?
え、「ほかに何の可能性があるのか」ですって?
いや、臭いのは僕の声かもしれないじゃないですか!
僕はよくクセの強い歌い方をすると言われるので、声が臭いということは充分考えられますよ。
え、「声も口が臭いのと一緒だ」ですか?
はあ、胃腸からにおいの原因があがってくるということですね。
いやいや全然違いますよ。
声は空気を震わせて初めて声になるわけです。
僕の胃腸から流れ出る呼気は臭くありません。
僕の息は空気を臭くする力を持っているだけです。
はい、「余計に悪いじゃないか」とおっしゃるわけですね。
いいですか、ここで重要なのは僕は被害者ということです。
例えばホッチキスがありますよね。
僕は誤ってホッチキスを指に打って怪我をしたことがあります。
それはホッチキスに問題がありますか?
ありませんよね、悪いのは僕なのだから。
ホッチキスは指を怪我させるために作られているわけではなく、紙などをとめるために存在するわけです。
ホッチキスには機能的に僕を怪我させることができるけれども、それは僕の誤使用があって初めて起きることなのです。
寧ろホッチキスは僕の不注意により汚名を着せられた被害者であるわけです。
僕の件に関しても同じです。
僕の呼気は機能的に人に臭く感じさせるものなのかもしれないけれども、それは空気があって初めて起きることなのです。
だから僕の口は臭くありません。
いや、寧ろ臭いのはこの世界の空気なのかもしれませんよ。
テレビをつければ痛ましい事件や汚職事件などのニュースばかり流れています。
ネットを見たら匿名の人が標的を探して叩いている記事ばかりです。
お解りいただけたと思います。
それでは僕も就寝の準備をさせていただきます。
まぁ今日は遅いので歯磨きはいいですかね。
この記事は当然のことながらフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。
※ お気に入りの孫の手です。