まる猫の今夜も眠れない

眠れない夜のお供に

虫が怖い [眠れない夜にくだらない話を]

お題「これまで生きてきて「死ぬかと思った」瞬間はありますか?身体的なものでも精神的なものでも」

いつの頃からか虫が怖い

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こんばんは、まる猫です。

今夜も眠れないでいます。

虫が...虫が怖いです。

歳を取るに連れて虫が怖くなっていきます。

これはどういう現象なのでしょうか?

昔は「虫は友達!怖くない!」と言わんばかりに、虫と戯れていました。

決して虫にドライブシュートをしていたとかそういうわけではありません。

虫も大切な命です。

小学生の頃はセミもイモムシも手でつかむことができたはずなのに、今ではカブトムシがギリという感じです。

アイキャッチ画像に虫を貼ろうと努力するも、蝶が限界です。

それ以上だと「うわっ」となって記事が書けません。

 

10年以上前のことですが、訳あって山奥にある大学に行きました。

そこから帰るにも遅くなるので、その日は体育会系の部活をする人が合宿するような場所に宿泊することになっていました。

その場所は校舎からかなり歩くのですが、その道中に沈みゆく夕日に草木が照らされているのが見られました。

赤と緑のコントラスト。

都会では見られない自然の美しさに感動をしました。

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しかし、宿泊場所に着くと、僕は少しずつ自分が置かれている状況を理解していきました。

まず玄関前には大量の虫がおられ、僕を歓迎してくれました。

やっとのことで宿泊所の中に入ると、長い廊下がありました。

一番奥の教官室みたいなところが僕の部屋がだったので、そこまで歩いていきます。

その途中で綺麗に整頓されたベッドルームがいくつかありました。

自分の部屋に着くと、案内してくれた人は「じゃあ、また明日」と言って、去って行ってしまいました。

 

「え、独りなの?」

 

2階建てで、全部で20室くらいある棟に僕だけが残されました。

不安な気持ちいっぱいに、部屋のドアを開けます。

泊まらせていただく部屋はとても広くて綺麗でした。

きちんと手入れが行き届いていて、清潔感に溢れていました。

しかし、僕はカーテンを開けると、虫が部屋に侵入しようと大量に待ち構えているのがわかりました。

「ぬおお」と僕は叫び、シャッとカーテンを閉めました。

長い夜の始まりです。

 

「俺、退場!」

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僕が泊まる部屋には壁際に机とベッドが2つ置かれていて、ユニットバスだと思しき部屋がついていました。

テレビなどはなく、ラジオとシーツだけが置かれていました。

持ってきた荷物をおろし、ベッドで横になっていると、ついついウトウトしてしまいました。

 

どのくらい経ったのでしょうか?

 

真夜中に羽音で目が覚めました。

気づけば先程までいなかったはずの小さな虫が「虫、参上!」とばかりに部屋の中を飛び回っています。

「えぇ〜...」

目覚めた瞬間にテンションが下がっていきます。

そして恐る恐る立ち上がります。

ライブ会場でタオルを振り回している人のごとく、僕はシーツをブン回し、小さな虫を落ち着かせていきます。

部屋の中の虫達が活動を止め、これにて一件落着と思った刹那、窓にガンガンという音がします。

カーテンの隙間から見ると、部屋の明かりに引き寄せられて、外の虫達が窓にぶつかっているのです。

「うわぁ〜...」

思わずのけぞり、ベッドに倒れ込みます。

自分を落ち着かせようと、そばのラジオを付けると、季節は夏、怪談コーナーが流れてきました。

しかし人間というのは凄いもので、軽いパニック状態にあると、怪談ですら単なる音声に聞こえてきます。

そしてここで最大のピンチが訪れました。

卜...トイレ!!

尿意に気付き、僕はスパイのように足音を立てず、ユニットバスと思しき部屋のドアの前に立ち、耳を当ててみます。

 

ブ〜ンブンブン...

 

明らかな羽音。

「たのむ、暴走族であってくれ!」

そう願うも、怖くてドアが開けられません。

「駄目だ、もうトイレには入れない。」

ベッドに戻り、枕に顔を埋めます。

今思えば泣いていたかもしれません。

「このまま寝るしかない」と思い、怪談を流しながら、電気を切ります。

すると部屋の中の小さな虫が活動を再開しました。

そして窓にはかすかな光を求めて再び虫がぶつかってきています。

さらにトイレからはブ〜ンブンブンという音。

「駄目だ、暗いと奴らの動きが気になって眠れない。」

そう思い、電気を点けます。

その瞬間に窓に当たる虫の音が大きくなります。

しかも明るすぎて眠れない。

 

詰んだ...

 

そして僕は壁を背にして、見張り塔の番人のように、部屋を飛ぶ虫が僕の領土に入らないかを眺めていました。

翌日、日の出とともに僕は部屋を出て、臭い体を引きずって校舎前に辿り着きました。

数時間後に警備員さんが見つけたのは、校舎前で体育座りをしている僕でした。