まる猫の今夜も眠れない

眠れない夜のお供に

【胸キュン必至!】【青春群像劇】小さな恋のメモリー

ブコメ好きの方、お待たせいたしました

中学最後の秋、球技大会が行われた。

そしてこの日に賭けていた男がいた。

カズゥだ。

カズゥは大人しく優しかったが、女生徒の人気はなかった。

それはかつてボンちゃん軍団に属していたことが尾を引いていたからだと思う。

 

※ ボンちゃん軍団に関する情報は以下の記事で。

maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp

maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp

 

カズゥはユウコちゃんが好きだった。

ユウコちゃんは活発だが少し天然なところがある女の子で、一部の男子から根強い人気を持っていた。

カズゥは野球に参加することが決まっていた。

当時から野球好きの僕と同じチームだ。

受験も控えているというのに、僕たちのチームは優勝目指して燃えていた。

そしてカズゥはこの日にユウコちゃんに想いを告げる計画をしていた。

いらすとや (www.irasutoya.com)

君のためのホームラン

カズゥはこの日に向けて猛練習を重ねていた。

素振りを毎日し、友達にボールを投げてもらい、それを打つ練習も欠かさなかった。

その努力のかいあってか、球技大会ではかなりの活躍をしていた。

期待されていなかったので、カズゥは8番レフトを守っていたのだが、毎試合、必ずヒットを打ってチームの勝利に貢献をした。

そのカズゥの姿は応援に来てくれていたユウコちゃんの目にも映っていた。

彼女の中でカズゥを見る目も変わっていたと思う。

そして僕たちのチームは決勝戦へとコマを進めた。

休憩の時間、僕たちはお茶を飲みながら、対戦相手の分析をしていた。

たしか僕たちは7組で、対戦相手は5組だったと思う。

5組は元野球部員レギュラーを数名擁する優勝候補ナンバーワンだ。

僕たちはああでもないこうでもないと言いながら、戦略を練っていた。

そんな中、カズゥだけは違った。

休憩に入る直前、カズゥはユウコちゃんに「決勝でホームランを打ったら自分と付き合って欲しい」と伝えたらしい。

もう、ユウコを甲子園に連れてってばりの世界観だ。

ユウコちゃんは返事をしなかった。

その日のカズゥの活躍を見て、もしかしたら迷っていたのかもしれない。

 

決勝の行方

かくして決勝が始まった。

しかし実力差は想像以上にあり、僕たちの1回表の攻撃は敢え無く三者凡退に終わった。

そのあと、5組の攻撃で僕たちは6点を許してしまった。

2回表の僕たちの攻撃は先頭打者がヒットをうち、反撃なるかと思われたが、その後が続かず5番、6番、7番打者が凡退に終わった。

しかし僕たちは信じていた。

次の回になれば、8番打者のカズゥの打席に回る。

カズゥが必ずホームランを打ってくれる

僕たちの反撃はそれからだ。

2回の裏の相手の攻撃もものすごいものがあったが、僕たちは守りのリズムが出来てきて、4点で抑えることができた。

さあ、ここから反撃開始だ。

カズゥ、君のホームランを見せてくれ。

ユウコちゃんも君を見つめている。

僕たちは相手の球筋はわかった。

君の後に続いて、打って打って打ちまくってやる。

そう思った矢先、審判をしていた先生がすっくと立ち上がり、こう言った。

ゲームセット。

10点差が開いたため、ローカルルールにより、5組の勝利が決まった。

打席に入ろうとしていたカズゥはその場にうずくまり、聞いたことのない「むぅぅぅん」という切ない声を出していた。

カズゥはホームランどころか、打席に立つことなく試合を終えたのだ。

そしてそれからユウコちゃんは能面のような表情で後片付けを開始したのだった。