出血?
僕は奥様には頭が上がらない。
結婚前から頭が上がらない。
その理由は2つほどある。
今日はそのうちの1つをお話できたらと思っている。
奥様と結婚をさせていただく前の話だ。
なお、僕が奥様に頭が上がらない様子は以下の記事にて紹介されている。
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp
ある日、僕が家に帰り、シャワーを浴びようと脱衣すると、臍 (へそ) が当たる洋服の部分にどす黒い血のようなものが付いていた。
「何だ、これ?」
鼻を近づけると血生臭い匂いがする。
僕はこれを勝手に血だと考えて、自分の身にとんでもないことが起きていると思い、急に不安になった。
当然のことながら、自分の臍から血が出ることなど今まで経験したことがない。
しかし、その日はとりあえず眠るしかなかったので、ベッドの中で不安を押し殺して眠りについた。
愛ゆえに
次の日も、また次の日も、臍があたる洋服の部分がどす黒い汚れていた。
そんな日が数週間続いた。
これはもう偶然ではない。
何かが僕の中で起きている。
恐ろしい想像ばかりが頭に浮かぶ。
その上で考えるのは家族のことと、お付き合いをしている女性のことである。
両親にはできる限りの親孝行をしようと心に誓った。
妹も含めて旅行に行けたら良いなと思った。
そしてお付き合いしている女性についてだ。
お付き合いしてた女性とは今の奥様だが、このときまだ結婚はしていない。
僕は考えた。
こんな臍から出血している人間が彼女を幸せにできるだろうか。
臍から港の片隅のような匂いをさせる人間が彼女を幸せにできるだろうか。
そもそも臍から血を出している人間はいつまで生きられるのだろうか。
いろいろな思いが去来する。
子どもができたら、授業参観に行きたい。
けれども、後ろで立っている父親の臍から、とめどなく血が流れていたら、その子はどんな気分になるだろう。
ああ、何と不憫なのだろう。
そんなことを考えると、涙が溢れてきた。
僕の臍から血が出るばかりに。
そして僕は当時まだ結婚をしていない奥様に電話をし、「自分と結婚しても幸せにはなれない」ということを伝えた。
そして返事を待たずに電話を切る。
彼女から何度も折り返しの電話がかかってきたが、僕は無視を決め込む。
これでいいのだ。
冷たい男だと思ってもらった方が、彼女はすぐに立ち直れるはずだ。
彼女の幸せを考えたら、この決断が1番だ。
僕は涙を浮かべて、カーテンを開ける。
夜景が滲んでいた。
こんな臍出血男と一緒にいても彼女は幸せにならないのだ。
こんな夜にはKeith Jarrettのピアノは聴きたくはない。
後編に続く