まる猫の今夜も眠れない

眠れない夜のお供に

出血と純愛 【後編】

※ この記事は以下のものの続きです。

なお、本記事ですが、とても繊細な方はお食事中に読むことはお控えください

maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp

待合室にて

そのあとも僕の臍 (へそ) は絶賛出血中であった。

そして結婚前の奥様にお電話をした次の日に、僕は病院に向かった。

いらすとや (www.irasutoya.com)

病院の待合室ではいろいろな人が座っていた。

おじいさん、おばあさん、小さな子どもとお母さん。

大病院だったので本当に多くの人がいた。

僕は「ああ、この中に臍から血が出ている人は何人いるのだろうか」と思っていた。

しばらくすると看護師さんが近くに来てくれる。

「本日はどうなされましたか?」

僕は「少し前から臍から血が出ています」と答える。

看護師さんは僕がふざけていると思ったのか、僕の目を見た。

僕は既に少し涙ぐんでおり、看護師さんも「これはふざけているわけではない」と認識してくれたと思った。

 

医師の診断

しばらくして診察室に呼ばれる。

お医者さんにこれまでの状況を説明し、臍を見せる。

お医者さんは一瞬で顔がこわばった。

そして「大変珍しいケースです」と切り出す。

僕は「先生、教えてください、僕に何が起こってるんですか?」と詰め寄る。

「最初は臍炎だと思ったのですが...」

先生は鼻から息を吸い込んで、話を続けた。

「臍の中に何かが入っていて、それが化膿の原因になっているんだと思います。」

ん、どういうことでしょう?

「あと血だと思っているものですが、単純に膿です。」

先生、そんなまさか。

僕は恋人と結構深刻な話をしちゃったんですよ。

そのあと、先生は臍の中を開けて、膿を出し、化膿の原因となっている卵の殻みたいなものを摘出してくれた。

「臍を開ける」という表現が合っているか解らないが、とにかく僕は痛みの中そう思った。

そして僕を数週間悩ませた臍はピタリと膿を出すことを止めた。

 

奥様に電話

病院から出て、当時まだ結婚していなかった奥様のことを考えた。

いまさら何と言えばいいのか。

恐る恐る電話をすると、奥様が出られた。

僕は小さな声で「今、病院に行ってきたんですが...」と話す。

すると奥様は「ああ、臍を見せたの?」と言う。

僕は驚いて「知ってたんですか?」と尋ねる。

「知ってたわよ、あんたの臍臭かったもん。」

何ということだ、彼女は知っておられたのか。

「それで前の電話の件ですが...」と僕は切り出す。

「ああ、あんた思い詰めてたもんね。」

「解りましたか?」

ロバート・デ・ニーロのモノマネ芸人みたいな顔で臍を見ていたからわかるわ。」

「はい、すいません。」

「まあ、人間思い詰めることはあると思うけれど、何でも独りで背負おうとしちゃ駄目だよ。」

「はい、すいませんでした。」

「私が怒っているのは、あんたが相談もせず独りで話を進めたことです。」

「申し訳ありません。」

「以後気を付けなさい。」

何と心の広い奥様でしょう。

僕にはもったいないほど器のデカい女性です。

そんな奥様ですが、先日我が家から僕の部屋を完全になくすことに成功されました。