「卒業のことば」はなぜ1度はお蔵入りになったのか
お蔵入り記事である「卒業のことば」はそもそも「ボツ案2」から作られた。
卒業式で手羽先を食べたあとの指が美味しいということを保護者に伝えるという状況がたまらなく滑稽だと思ったわけだ。
ところが実際に記事にしてみると、当初予定していた手羽先のくだりなどの「あるあるネタ」とリンクさせなくても意外と記事になってしまった。
ボツ案1とボツ案2の方向性が違うのはそういう経緯があるからである。
実際にこの枠組みは好きだ。
たくさんの芸人さんにこすられているパッケージであるが、いつかボツ案でない完成版を読者様に提示できたらいいと思っている。
ではなぜ気に入っているこのパッケージを1度はボツにしたのか。
それは総じて「緊張と緩和に欠けていた」からである。
問題点1
代表:振り返ると僕たち私たちはいろいろなことを経験してきました。
緊張した入学式。
一同:入学式。
代表:校長先生の話が2時間30分に及ぶとは思いませんでした。
松山先生が噛み倒したオリエンテーション。
一同:オリエンテーション。
代表:最後の方は口から血が出ていて心配でした。
入学式の段階からボケてしまったために、全体的にしまりがない感じになってしまった。
ボケではない箇所をきちんと用意することで緊張と緩和が生まれるわけであり、全編ボケるとお腹いっぱいになるのが早くなってしまう。
問題点2
代表:仲間との絆が深まった球技大会。
一同:球技大会。
代表:種目がクリケットしかないことに驚きました。
【中略】
そして僕たちを襲った定期テスト。
一同:定期テスト。
代表:スワヒリ語で出題した川原先生のことを僕たちは許しません。
一同:許しません。
球技大会からクリケットという流れは想定内の動きしかしていない。
また定期テストからスワヒリ語という流れも想定内の動きである。
これらは誰でも容易に思いつく流れだ。
つまり緩急の幅が大きくなく、ジョークとしてはパンチ力に欠けるものとなっている。
問題点3
代表:楽しくなかった遠足。
一同:遠足。
代表:伊能忠敬と同じルートを歩かされるとは思いませんでした。
一同:許しません。
代表:まだ帰ってきていない仲間もいます。
伊能忠敬さんは14年かかって日本を測量したと考えられている。
歩いた距離は35000キロと言われている。
帰っている生徒がいることのほうが不思議である。
リアリストのかたはきっとこの辻褄が合わないことに萎えてしまうだろう。
問題点4
代表:校長先生が自分のことを「マイパピー」と呼びなさいと言っていたことに唖然としました。
食べ終わったあと指に残った味がたまらなく美味しい手羽先。
一同:手羽先。
代表:思わず指を齧ってしまうときすらあります。
ボツ案2では学校生活での理不尽なボケと日常生活のあるあるが混ざっている。
そのこと自体はいいのだが、マイパピーからいきなりの手羽先では読者様にしてみたら謎の流れになってしまったかもしれない。
もう少しナチュラルな話の逸れかたのほうが読者様は笑いに集中できたと思われる。
問題点5
代表:夏の恒例行事、水泳大会。
一同:水泳大会。
代表:今年は修学旅行先の川で行われました。
【中略】
グランピングって聞いていたけれどただのでっかいテント。
一同:ただのでっかいテント。
代表:業者さんがグランピングを履き違えている場合があります。
待ちに待った修学旅行。
一同:修学旅行。
代表:ただ旅行先がインダス川のほとりということは事前に教えてほしかったです。
りました。
学校生活の理不尽な内容から一度逸れたのであれば、最後まで日常生活のあるあるに特化していくべきだった。
学校生活のネタとあるあるネタを交互に入れてしまったことで加速度が減少したことは否めない。
最後の一言だけを学校生活のネタにして記事をさげるようにするのがシンプルで良かった。
もう少し読者様によりそった笑いを考えるべきだった。
まとめ
今回はお気に入りのフォーマットなのになぜ1度ボツにしたのかについて触れさせていただいた。
もしも気になったかたはボツ案になっていない記事を読んでいただきたい。
そこには今回のように緊張と緩和のバランスが崩れたものはない。
そこにはただ緩和だけの記事があることがわかるだろう。
この記事は当然のことながらフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。