大人たるもの
大人たるものビュッフェでスマートに料理をよそいたいところである。
ところが元来意地汚く、何度も料理を取りに行くのが面倒な僕のような人間はビュッフェ・プレートに高々と料理を盛り付けて、ほかのお客さんから「バベル」とあだ名をつけられている。
このビュッフェで高々と料理を積み上げる盛り方を「全力滅茶苦茶盛り」と呼ぼう。
「全力滅茶苦茶盛り」は見た目からして全くスマートではないし、大人として美しい所作ではない。
「全力滅茶苦茶盛り」の難点はほかにもあり、料理を取ってしまった以上は結果として自分の限界を突破した量を食べる状況に陥ることが多くなることが挙げられる。
人生の10分の1を過ごした僕としては「全力滅茶苦茶盛り」をできるだけやめ、ほかの人から「綺麗」と言われるような盛り付けをしたいところだ。
今回はビュッフェ・9つ仕切り・プレートのケースを考えたい。
ビュッフェ・9つ仕切り・プレートとは以下のように正方形のお皿の上に9種類の料理を盛り付けられるようになっているお皿である。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
まず前提として「全力滅茶苦茶盛り」を避けるという理由で、①から⑨ある盛り付け可能箇所の1部だけを用いるというのは今回のコンセプトから外れていることとする。
例えば①③⑤⑦⑨だけを用いて、②④⑥⑧には何も盛り付けないというケースだ。
断っておくが、少ししか食べられないというケースにおいてはそれでもいいとは思うが、ここではビュッフェにおける第1ターンの盛り付けを考えているわけなので、全ての盛り付け可能箇所に盛り付けることを条件としたい。
そしてやはり盛り付けにはテーマが必要だと思う。
自らの食欲に任せて盛り付けるのではなく、「自分の美意識に基づいてストイックに料理を選びました」とするほうが美しいわけだ。
お洒落は我慢と言うではないか。
今回発案した盛り付けは「スプリング・ハズ・カム」というものである。
長く耐え忍んだ冬を超えて、春がやってきたという喜びをビュッフェのプレートで表現するというものだ。
「スプリング・ハズ・カム」の春の部分はやはり淡い緑と初々しい赤で表現したい。
したがって9つ仕切り・プレートの①②⑥にはレタスなどの緑黄色野菜を盛り付けたい。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
それらとともにミニトマトなどを盛り付けられるとなお春の粧を感じさせられるだろう。
次にイチゴやさくらんぼ、白桃などのフルーツは⑤に盛り付けたい。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
これで木々の緑と芽吹いた花を表現することができる。
次に④⑧⑨であるが、ここには大地を賛歌する盛り付けを行いたい。
そうなると④⑧⑨には茶色の食材、豆類や肉類、フライなどの揚げ物などを並べるのがよい。
特にフライに関しては薄い茶色となっており、春の大地を表すのに適していると言えよう。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
そして⑦では春の日差しを水面に映す海を表したい。
そうなると水色が望ましいわけだが、水色の食材というのは通常ビュッフェには置いていない。
ゼリーなどで水色のものがあればいいが、ない場合は青魚などで海を表現したい。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
最後に残った③であるが、ここでは春の太陽を表現したいところである。
太陽となれば黄色あたりがいいだろう。
そうなると無難なのはミカン、攻めるならばコーンを放射線状に敷き詰めるのもよい。
① ② ③
④ ⑤ ⑥
⑦ ⑧ ⑨
そして春といえば桜。
全体に桜色をした食材 (桜えびなど) をまぶして桜に模せば「スプリング・ハズ・カム」の完成となる。
1度お試しあれ。
ともしても感性豊かなお客さんがあなたの盛り付けで涙を流すことはないだろう。
機会があればさまざまな盛り付け例を発案していきたいと思う。
美しく盛り付けたら美しく食べきろう。
ストップ、フードロス!