街のお弁当屋さん
その日は朝から奥様の体調が悪く、ピクニックの予定であったが家で過ごすことになった。
そして家族のお昼ごはんはあるが、僕のお昼ごはんはないということであった。
冷静にこの状況を観ると、ピクニックに行ったケースでも僕の分のお弁当はそもそもなかったのではないかという疑念は生じるが、答えの出ないことを悩んでもしょうがない。
それにお弁当屋さんで買うお弁当は美味しいから自分としては嬉しいのだ。
ただし自腹であるため、我が大蔵省は致命的な打撃を被ったということは言うまでもない。
その日行ったお弁当屋さんは家から少し離れたところにあった。
2キロくらいあるので自転車で行くのが良いだろうということになり、ペダルを漕ぎ出した。
街は冬のさなかであるというのに15℃を超えていて、コートが要らないくらいであった。
そしてお弁当屋さんに着くと、12時よりかなり前だというのに店は大変混雑していた。
駐車場には車を止めるスペースがなく、カウンターには行列ができていたため、注文するのにもしばらくかかりそうだった。
店員さんは愛想よく応対していたが、明らかにキャパシティを超えていて焦りを感じさせた。
やっと自分の番になり、お弁当を注文し、ふと気付いた。
野菜がないではないか。
こんな弁当を買って帰ったら奥様から罵られることは目に見えている。
そこで僕は「すいません、サイドメニューにサラダを付けてください」とお願いした。
店員さんは笑顔で「かしこまりました」と言ってくれた。
そして混雑しているので30分くらい時間がかかることを知らされたので、僕は自転車をお弁当屋さんにおいて街をブラブラすることに決めた。
ふだんあくせくしているからだろうか、こういう時間って嫌いじゃない。
特に宛もなく30分以上歩き回って、お弁当屋さんに戻る。
店員さんは笑顔でお弁当を渡してくれた。
何て感じのいい店なのだろうか。
僕は上機嫌で家に帰り、お弁当を食べようとしたその刹那、些細な事件が起こった。
サラダがない。
いや、厳密に言えばお弁当のほかに「サラダ」と書かれた袋があった。
そしてその袋の中には大きな唐揚げが2つ入っていた。
あれだけ混雑した店を3人位で切り盛りしていたのだからミスが起こるのは仕方がない。
もしかしたら僕に唐揚げが似合うと思い、「サラダよりも唐揚げを食べさせたい」と思ったのかもしれない。
もしかしたら僕の風貌があまりに悪く「こんな人間がサラダなど食べるはずがない」という先入観を与えたのかもしれない。
だったら僕がいけない。
こういう出来事は面白いので普段は「得した」というくらいに思ってしまうのだが、今回は自分が頼んだお弁当がお弁当なだけに首をかしげてしまった。
タイトル「僕の注文した弁当は唐揚げ弁当大盛り」