眠れぬ夜
眠れない日々が続く。
精神的なものが原因ではないが、夜中に目が冴えてしまう。
そしてそんな夜はベッドで横になり、天井を見つめる。
僅かに見える天井は暗い海のようで、冷たい孤独を感じさせる。
そして色々な思いが心に去来する。
政治のこと。
メディアのあり方。
正しい教育とは一体何を教えることなのか。
目まぐるしい発展の中で置いてけぼりにさせられた文化的成熟。
例えば昨日の夜はまず「とりめし」がなぜあんなに美味しいのかについて考えた。
郷土料理の「鶏めし」も美味しいが、ここで言及しているのはお弁当屋さんで購入できる「とりめし」だ。
要するに鳥の唐揚げに甘いタレとマヨネーズがかかっているお弁当だと思っていただきたい。
岡山県が発祥の地らしいが、何なんだろう、あの美味しさは。
多分僕の好きな食べ物ランキングのトップ15には入るだろう。
僕がよく頼む「とりめし」はちくわ天やきんぴらなどが入っていて、これもまた美味しい。
甘いタレが食欲を増進させるのだろう。
実はその日は「とりめし」を2杯食べていた。
そして次に考えたのは「とりめし」と「唐揚げ丼」はどう違うのかということだ。
違いが全くわからない。
なんだったら両方好きだ。
暗い部屋の中で僕のため息だけが聞こえる。
これは考えに考えても答えが出なかったので、検索をしてみると、「味付けが違う」という情報を入手した。
もしも「とりめし」と「唐揚げ丼」の両方がメニューにあったら、僕はどうすればいいのだろうと思った。
それから次に考えたのは京都で食べた「とりめし」のことだった。
僕が住んでいた京都のとある町には見たこともないコンビニエンスストアがあったのだが、そこで売られていた「とりめし」が本当に美味しかったという思い出が蘇ってきたのだ。
思えばあれが僕と「とりめし」との初めての出逢いだった。
今もあのコンビニエンスストアはあるのかと検索をしてみたが、北海道と関東にしか存在が確認できなかった。
だとすれば、あのときあの場所で食べた「とりめし」は幻であったのだろうか?
次に考えたのは「とりめし」の別名だ。
本当に好きなお弁当なので素敵な名前を考えたい。
そしてお洒落で誰もが食べたくなる名前がいい。
そうなるとトゥーリー・メーシーなんてどうだろうか?
そして最後に考えたのはこんなに好きな「とりめし」なのに、お弁当屋さんではセンターポジションではないのはなぜなのかということについて考えた。
お弁当屋さんでは唐揚げ弁当、チキン南蛮弁当、のり弁当などがどうしてもセンターポジションになる。
僕の愛する「とりめし」はどうしても主役ではない。
多分多くの人が唐揚げ弁当を食べてたら充分だと考えているのだろう。
悲しい。
悲しいがおそらく事実だ。
色々なことを考えて僕は疲れてしまった。
お誂え向きにまぶたが重くなってきた。
やっと眠れる。
そう思った刹那、なぜだろうか僕のお腹が鳴りだしたのだった。