真夏の帰り道
僕は自転車をこいでいた。
仕事場から家に帰るところであった。
真夏の太陽にアスファルトが熱せられて、空気が揺らめいて見える。
じんわりと汗ばむ自分に気付き、タオルを持ってこなかったことを後悔した。
そしてそれから間もなくして、自分が衝撃の出会いを果たすことを、僕はこのとき理解していなかった。
衝撃の説明
その出来事について話す前に、それがどのくらいの衝撃だったのかを説明したい。
その衝撃たるや、小学生のころにプレイしたミシシッピー殺人事件というゲームと同じようなインパクトであった。
ミシシッピー殺人事件とは、船上で起こる殺人事件を解決するという本格推理アドベンチャー・ゲームであり、僕が手も足も出ずに諦めてしまった作品である。
プレイヤーは探偵となって難事件を解決するという筋書きである。
うろ覚えであるが、確かゲームスタート直後に近くの部屋に入った途端、ナイフが飛んできて、主人公に刺さりゲームオーバーとなる。
また事件を解決するために、別の部屋に入ると、船の中なのに落とし穴があり、主人公が命を落としゲームオーバーとなる。
殺人事件の遺体を発見する前に探偵が遺体になるという斬新な推理ものであった。
理不尽な作品を愛すことができる、心にゆとりがある方にはもってこいの一品である。
僕の衝撃を極めてわかりやすく説明したつもりだが、まだ要点を得ないかたがおられるかもしれないので、別の例で衝撃の度合いを説明する。
別の日に僕は自転車で帰宅中だった。
細い路地が好きなので、そういう道を好んで通っていると、大工さんらしい人が何かを支えていた。
見るとそれは倒れかかっていた街灯であった。
大工さんはプルプルしながら、近くにいた仲間に小さな声で「早くぅ〜」と言っていた。
なぜ、この大工さんは倒れてきた街灯を支えていたのだろう。
とにかく、真夏の出会いにはこのくらいの衝撃があったのだ。
世界初?まさかの生き物との遭遇!
話を本題に戻す。
あれは幻だったのか。
あの生き物がいるはずがないのだ。
でも確かに僕はそれを目の当たりにした。
僕は自転車をこいでいた。
すると遠くから中年の男性がママチャリに乗ってこちらに向かってくる。
何のことはない。
よくある光景だ。
しかしその男性が僕の横を通り過ぎたとき、彼がそれであることを知らされた。
彼のTシャツにははっきりとこう印字されていた。
ラスボス
追記
後日調べてみると、このTシャツは販売されている模様だ。
彼の体からにじみ出た文字ではなさそうだ。
余談ではあるが、本日は以下のTシャツを着用されている人と遭遇した。
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