まる猫の今夜も眠れない

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何万分の1? [眠れない夜にくだらない話を]

お題「泣きそうになった瞬間」

60分間で起こった出来事

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僕は昔から自転車が好きだ。

今乗っているのはそんなに高いものではない。

15000円くらい小さな自転車だ。

1日に30キロくらい乗ったりすることもある。

そんな僕ではあるが、自転車にまつわる泣きそうになった瞬間もある。

大学生時代、僕はバイトが終わり、自転車をとめていた駐輪場に向かった。

家までは10分くらいの道のりだ。

その日はあいにく雨が降っていた。

昔の天気予報はあてにできないことが多かった。

しかも結構な土砂降りだ。

けれども自転車を置いて帰るわけにはいかない。

濡れるのを覚悟で帰るしかないかと諦めて、自転車の鍵をポケットから出す。

そして2種類付けてあるロックのうち、1つを外そうとすると、違和感に気付く。

 

おかけになっていたサドルは使うことができません。

 

自転車のサドルがない。

どこかに落ちたのか?

サドルだけに流星にでもなったのか?

辺りを探してもサドルがない。

盗られた?

何とサドルを盗まれていた。

誰が何のために大学生の男のサドルを盗むのだろうか?

しかもぽっちゃり大学生だ。

突然の状況にしばらく頭がぐるぐるしていたが、取り敢えず家に帰るしかないという結論に至った。

立ちこぎをすれば、サドルがなくても乗れることは乗れるだろう。

恐る恐るエアーサドル状態で自転車に乗り、ペダルに足を乗せたその刹那、ペダルが勢いよく自転車から抜けた。

勢いそのまま、僕の体も沈み込む。

哀れ、僕のお尻はサドルがあったアルミの筒の部分に深々と刺さったのであった。

 

「ぬぅぅぅ」

 

痛みでその場にうずくまる。

完全なる自爆。

結局、自転車は1ミリも進むことはなかった。

結果としてはサドル無しで運転していたら、危険運転と判断されたかもしれないので良かったが、しばらく僕は駐輪場で悶絶していた。

そしてべそをかきながら、元自転車を引きずって、雨の中を歩いた。

人為的なものであるならば、その悪意たるや凄まじいと思ったが、自分にはそんなに人から恨まれる覚えがない。

そもそもそんなに人と話すことがない人間だったから、僕を知る人はごく僅かだったと思う。

となると、サドルはだれかがいたずらでしたことだが、ペダルは偶然だったのだろうと自分を納得させた。

「どんな確率だよ」とブツブツ言いながら歩き、お尻がジンジン痛むのをこらえて、30分くらいして自分のアパートに着いた。

ここまででも既に痛みで涙は出ていたが、このときアパートでも悲劇が起こっていたことを僕は知るよしもなかった。

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玄関を開けて、電気を点ける。

水浸しの服を脱ぎ、室内に進むとまたもや違和感が僕を襲う。

そしてその違和感の正体に気付くと、僕はその場にへたり込んだ。

 

天井から雨漏りをしている。

 

「どういう状況なんだよ、これ」とつぶやいて、僕はその場にうずくまった。

わずか60分でここまでのことが起こったのは後にも先にもこれが初めてだった。

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