※ この内容は以下の記事の続きです。
maruneko-cannot-sleep.hatenablog.jp
Let's Search For Tomorrow
かくして我が家にリモコンのない週末がやってきた。
それは普段見ているテレビが一切映らないことを意味する。
テレビっ子の奥様のストレスレベルは最高だ。
しかめっ面を常にしているせいか、いつもより顔のパーツが中央に集まっている。
休憩時間に録画しておいたドラマを見ることができず、育児をし続けないといけないのだ。
僕は仕事がなかったのでできる限り子どもと遊ぶ時間を作った。
一緒に粘土で遊んだり、公園で遊んだりと、至らないながらもできる限りの家族サービスをした。
しかし奥様のストレスは軽減されることはなかった。
子供が寝たあと、疲労とストレスで奥様はソファーに埋もれていた。
そして小さくつぶやいたのだ。
「もう無理だ。」
それからおもむろに立ち上がり、こう宣言された。
「これよりリモコン奪還作戦を開始する。」
「奪還?」とは思ったが、僕に意見する権利はない。
かくして土曜の夜10:00より奥様司令官のもとリモコンの捜索が始まった。
まずはテレビのある部屋からだ。
正直我々はテレビのある部屋のどこかにリモコンはあるだろうとふんでいた。
初めにテレビが乗っているサイドボードの後ろを調べた。
言葉にすれば簡単だが、サイドボードの中に入っている100本以上あるお笑いのDVDを全て出して、ボードを軽くしてから持ち上げて移動させるという大仕事であった。
しかしリモコンは見つからない。
ボードの裏のスペースに掃除機をかけてから、サイドボードを元の位置に戻す。
次は本命のソファーの下だ。
家族が全員座れる大きなソファーを全て壁に立てかける。
しかしリモコンは見つからない。
本棚の後ろ、おもちゃのキッチンの後ろ。
そんなとこにあるはずもないのに。
そして11:00をとうに過ぎたあと、テレビのある部屋にリモコンは隠されていないという衝撃の結論に達したのだった。
奥様はここでエネルギーを使い果たし就寝した。
僕はというと「タンスの辺りを調べてから寝る」と奥様に伝えて、YouTubeで芸人さんの漫才を見てゆっくりと眠りについた。
作戦は翌日も続いた。
テレビがある部屋の隣の部屋、違う階にある部屋。
そんなとこにあるはずもないのに。
家中のありとあらゆる場所を探し、そしてどこにもリモコンは見つからなかった。
半ば諦めていたとき、奥様が叫んだ。
「あったあった!うぉぉぉぉぉ!あった〜!」
奥様はさながら「エイドリア~ン」と叫ぶあの人のようにリモコンを抱きしめて走り寄ってきた。
リモコンはタンスの裏から見つかった。
そこは子供の手が届かないような場所だったのにだ。
いまだになぜあんな場所にあったのか不思議だが、とにかく日曜日の午後8時には我が家にはリモコンが帰ってきた。
奥様は上機嫌になり、大事そうにリモコンを抱えて「もう離さないよ」と言った。
奥様の満足そうな顔を見て僕も嬉しくなった。
僕は心から奥様の健闘を讃えた。
奥様も笑っていた。
僕たちは波打ち際でじゃれ合う恋人同士のように戯れあったのだった。
奥様がこんなにも上機嫌ならば何を言ってもさほど怒られないだろう。
僕はこの機を逃すまいと、奥様の録画したドラマを間違って消してしまったことを伝えた。
何ということでしょう。
もう離さないと誓ったはずのリモコンが飛んでくるとは誰が予想できたでしょう。