昔から気になっている
道を尋ねられる。
令和の時代になっても道を尋ねられる。
絶対に僕よりも携帯の方が詳しく丁寧なはずなのに、道を尋ねられる。
高齢の方からだけでなく、若い人からも道を尋ねられる。
そして尋ねられると、急いでいても対応してしまう。
あ、忘れてました、こんばんは、まる猫です。
今夜も眠れないでいます。
街を歩いていると、道を尋ねられるのです。
体から小物感が溢れているのでしょうか?
確実に「こいつなら道を尋ねてもいい」と思われています。
何しろ、携帯電話を持っている人からも道を尋ねられたことがあります。
ほかには、携帯電話が普及する前の話ですが、観光名所で海外の方に話しかけられたことがあります。
困っている様子でした。
場所くらいは教えられるかと思っていましたが、その方はExcuse meのあとはすべてスペイン語(ポルトガル語かもしれません)で話され、どこに行き、何をしたいかも全くわかりませんでした。
何とか英語とその人が持っていたガイドブックを使って説明しましたが、その人は「OK!OK!」と言って、説明した方向と逆の方へ歩いていきました。
そして極めつけがこれです。
情熱の国イタリア
10年以上前に仕事でイタリアを訪れたときのことです。
スーツケースを転がしながら、美しい町並みを僕は歩いていました。
有名ブランド店が連なる通りでは色々なものに目移りし、明らかに田舎者感丸出しだったと思います。
出店のような場所でも高級時計が売られていたり、街角でパンのいい匂いがしたり、突然目の前に趣のある建物や教会が現れたりと、驚きの連続で、否が応でもテンションは高くなりました。
そんなときです。
通りの向こうから二人の男性が話しかけています。
そして地図を片手に何かを僕に聞いてきます。
ああ、やめてくれ。
どこからどう見ても僕がイタリア人ではないことはわかるだろう?
二人の男性はそこら中にイタリア人らしい人がいる中で、わざわざ僕を選んで道を尋ねてきました。
ここまで来ると、地球規模でバカにされている気がしました。
いったい何が問題なのか
道を尋ねられること自体はそんなに嫌なことではありません。
こんな自分が人の役に立てるなら幸いです。
ただ僕の場合ちょっと意味がわからないケースが多いのです。
多分僕に問題があるかと思い、あるとき自分を見つめ直し、色々試してみることにしました。
僕は今も昔もたいてい黒い服を来ています。
何となく黒い服を着ていると、考えていることが人に悟られない気がして、安心するからです。
ついでに、道行く人は黒い服の人には何となく話しかけづらいだろうと思っていたのですが、僕のケースを見るとどうやらそれは充分ではないようでした。
僕が黒い服を着ているときでも、皆様は全く躊躇する様子がなく僕に道を尋ねてきました。
なので試しに、ちょっと色味がかった眼鏡をしてみました。
しかしこれは素晴らしいことに全く効果がなく、街を歩いていて質問される頻度も減りませんでした。
次にしたのはポケットから葉巻の箱をちょっと見せておくというものでした。
かなり幼稚で愚かな理屈ですが、黒尽くめで、色眼鏡をしていて、葉巻が見えれば、道を尋ねられることもないだろうと思ったわけです。
そうしてさっそうと街を歩きます。
通りを抜けても誰にも道を尋ねられません。
やった!
謎の呪縛から逃れられた!
僕は喫煙所に行き、葉巻に火を付けました。
今はタバコを止めていますが、当時は仕事が一段落すると同僚と吸っていたので、葉巻の知識も多少ありました。
浅く吸って、香りを身にまとうように煙を吐くと、僕は勝利を確信しました。
すると、わざわざその喫煙所におじさんが入ってこう言いました。
「駅まではどういったらいいかね?」