カレー屋の淑女
カレーしか勝たんすぎて草なときはないか。
別に僕が優雅な平安言葉をふだんから用いているからと言って言葉の流行り廃りを揶揄しているわけではないでおじゃる。
僕にはカレーしか勝たんすぎて草なときがあるのだ。
カレーに撃たれて眠りたいぜ、OH YEAHってな具合だ。
いや、少し違うな。
たそカレーマイ・ラブとも違うし。
取り敢えずカリーそめとしておこう。
ドライカレーも大好きだが、ふつうのカレーが欲しくなることのほうが多い。

もうどうしようもないときは仕事帰りにカレー屋さんに行ってしまうことがある。
「家で作ってもらう食事はどうするのか?」と疑問に思われる読者様がおられるかもしれないが、カレーはベルばらと言うではないか。
そういうわけで僕は14時に仕事を切り上げ、自転車で帰宅中にカレー屋さんによった。
時間が時間だけに店には1人もお客さんはいなかった。
僕は独りということでカウンターの隅に座り、カバンをおろし、コートを脱いだ。
すると上品そうな女性の店員さんがやってきて、わざわざ「お荷物ありますしテーブル席になされますか?」と聞いてくれた。
僕は「え、でもそうするとお掃除が大変になっちゃうと思うので、こちらでいいですよ」と丁寧にお伝えする。
店員さんは笑顔で「お掃除のことなら大丈夫ですし、コートも床に付いてしまいますので」と言ってくれた。
僕は「そうですか、ではそうさせていただきます」と会釈をし、席を移動した。
何と気持ちのいい状況だろう。
お店はたった独りの客が居心地良く過ごせるように配慮をし、客は店に迷惑をかけない飲食スタイルを取ったわけだ。
「え、でもそうするとお掃除が大変になっちゃうと思うので、こちらでいいですよ」なんてなかなか言えない。
なぜそんな僕が同僚から「あいつの口、常に腐敗臭がするよな」と言われなくてはならないのか。

そして僕はテーブル席に移動させてもらい、メニューを広げる。
少しでもお店の売上に貢献しようとふだん食べないサラダと少しお高めのカレーを注文した。
店員さんもメニューを復唱し、軽やかに厨房に帰っていく。
居心地がいい。
世界が互いを想い合える場所であったらどれだけ素晴らしいことだろう。
僕とカレー屋さんの淑女が礼節というワルツを踊っているのだ。
そして淑女は僕の注文したカレーを持ってテーブルに戻って来る。

「こちら、シーザーサラダになります。」
そう言って彼女は丁寧にお皿をテーブルに置く。
一流レストランのようだ。
そして「こちら、ポークカツカレーでごさいます」と言ってお皿を手にしたその刹那だった。
淑女は笑いを堪えられず、ブフッという声を漏らしたのだ。
ん?
何に笑ったのか?
ポークのような人間がポークカツカレーを頼んだから?
いや、誰がポークのような人間だ。
淑女は肩を震わせ「すいません、では失礼します」と言って厨房に戻る。
僕は自分の着ている服を確認する。
もしかしてチャックが開いていたり、どこか破れているのではないかと思ったからだ。
しかし何も異常はなかった。
鼻毛でも出ているのかと思ったが、携帯で確認しても変なところはない。
もしかして知り合いなのかとも思ったが、ネームプレートには僕の知人には1人もいない名字が書かれていた。
偽名を使っているのか?
だとしたら顔に見覚えがないから誰か解らない。
でも向こうは僕を知っている?
気になってカレーの味がしない。
いつもは汗ばむほど辛いカレーを食べているのに辛味をまるで感じない。
それでも僕は完食をし、料金を払い、恭しくお礼を言って店を出る。
そして僕は近くのコンビニに行ってカレーまんを頼み、味わえなかったカレーを楽しむのであった。
※ カレーまん最高。
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