遅刻の理由
こんばんは、まる猫です。
今夜も眠れないでいます。
結局、眠れないで色々考えるのが好きなんでしょうね。
先日知り合いと世間話をしているとき、何となくの流れで「今までどんな理由で学校に遅刻したことがあるか」という話題になっていきました。
遅刻の経験は多くの人があり、こんな話題でもそこそこ盛り上がっていました。
飼っていた鳥が脱走して、探し回っていたために遅刻したという人。
父親にカバンを間違って持っていかれ、取りに行っていて遅刻した人。
地下鉄で居眠りし、環状線を何周もした人。
「あるある」な話が続き、僕の番が回ってきて、僕の遅刻のエピソードを話すことになりました。
流れに乗って自分も話していたつもりですが、どうも様子が変です。
僕は割と一般的だと思っていたのですが、最終的に「そんな理由で遅刻したことがある奴はいないわ!」と突っ込まれてしまいました。
アメリカの冬
僕は十代の頃、アメリカの東海岸に住んでいて、現地校に通っていました。
その学校はスクールバスで登校することになっていて、毎朝6時30分くらいに家の近くのバス停で並んでいた記憶があります。
アメリカは広くて、西海岸と東海岸で時差があり、梅雨の時期も違います。
冬の様子も地域によってかなり違います。
僕の住んでいた地域は冬はマイナス20℃になり、上の写真(アメリカのものではありません)よりも遥かに凄まじい雪が降るのでした。
カナダにも車で行ける距離だったので、かなり北に位置してた街でした。
積雪は1メートル近くになったと思います。
降雪があまりに酷い日はSnow Dayと判断され、学校が休みになりました。
これくらいならば日本でも結構あると思うのですが、僕の遅刻の理由はちょっと違いました。
玄関を出るとそこに
その日は前日から続く降雪で家の前にもかなり雪が積もっていました。
Snow Dayになるかもしれないと期待していたのですが、電話は一向に鳴りません。
「まぁ50センチも積もっていないからなぁ」と諦め、学校の準備をしました。
早朝からラッセル車が走り、道路は車が走れる状態になっていました。
渋々朝食をとり、アウターを着て出かける準備をします。
雪国の方はおわかりいただけると思うのですが、まず外に出るのが一苦労です。
雪が邪魔をして、玄関の扉が開かないのです。
何とか扉を開けて、外の世界へと歩みを進めようとしたときです。
何かがいる。
自分よりも大きな何かがいる。
とっさに玄関を閉めて、鍵をかけます。
呼吸をするのを忘れていたことに気付き、とっさに息を吐き出します。
そのあと、静かに玄関の中から確認すると見たこともない大きな動物が家の前にたたずんでいました。
物凄く大きな角と雪に覆われたその動物は、玄関の扉の向こうに僕がいることを知っているかのように、一点の曇もない目でこちらを見つめてきます。
トナカイだ!
でも、アメリカにトナカイはいないし、バカでかい鹿か?
アメリカの鹿でけぇ〜!
雪で覆われているのを差し引いても、明らかに日本の鹿とは違うスケールに、自然の雄大さを感じざるをえませんでした。
そのリアリティーと非日常が入り交じる状況に僕の頭は混乱をし、瞳はその生き物に釘付けでした。
しばらくして、やっと冷静になると、スクールバスの時間が迫っていることに気付きました。
ところがこの巨大な生き物は身じろぎ一つせず、ずっとこちらを見つめてきます。
外に出られない。
もう少し待てばどこかに行くかなと期待をさせますが、この巨大な生き物は一歩も動いてくれません。
剥製なのかもしれないと淡い期待をすると、わずかに首を動かすという心憎い演出をしてくれたりもします。
「どこかに行った!」と思ったら、何食わぬ顔で戻ってきたときには、玄関でへたり込んでしまいました。
結局、その動物が立ち去ったのはスクールバスが行ってから数時間後のことでした。
そうです、僕が遅刻した理由は玄関の外にバカでかい鹿がいて外に出られなかったから、というものでした。