半覚
僕の前髪はゲル状の化粧品で固められ、前方に新幹線のように突き出していた。
加速を付けたら壁に刺さりそうだ。
これはあれだ、いわゆる1つのヤンキーの髪型だ。
近くにある小さな鏡を見ると僕の額には剃り込みも入っていた。
その部分はサ◯エさんに出てくるカトゥオ君の頭のような色をしていた。
なぜ小心者で有名な僕がこんな髪型をしているのか解らず、居ても立っても居られない気持ちになった。
中学生時代は授業中に先生にあてられたときに、あまりに動揺しもごもごしていたら、「何を食べているんだ!」と冤罪被害を受けたことがある僕だ。
こんな大胆な髪型ができるはずがない。

気付けば服装も変だ。
僕の学生服はとても長い。
オ◯ケのQ太郎のようだ。
こんな服で町を歩いたら、怖いお兄さんにからまれてしまうじゃないか。
嫌だ、そんなのは嫌だ。
そして残念なことに僕の周りには似たような人たちがごった返していた。
もう鮨詰め状態である。
ああ、終わった、絶対からまれる。
そうは思ったが、そこは全員が容易には身動きが取れないほどの密集具合であり、僕一人が襲われるということはなさそうであった。

このあたりで「もしかして夢を見ているのかなぁ」と思ったのだが、それでも周りのお兄さんたちが怖すぎて完全な明晰夢になることはなかった。
どうも僕がいるのはバスの中らしい。
それも前方の乗車口からすぐのところである。
僕を含めた凄い髪型で、多様性が尊重された制服を着ている集団は互いを押し合いへし合いバスの中で蠢いていた。
鮨詰めの環境でその集団の1人1人がある場所を目指していたのだ。

そしてその場所が解った。
バスの最後部座席である。
このヤンキー集団数十人は鮨詰め状態になりながらも1人1人がバスの最後部座席を目指していたのだ。
それが解った途端に僕は笑いながら目を覚ました。
何と愉快な夢なのだろう。
不良少年たち (1名は不良初老)がバスの最後部座席を目指してしのぎを削っていたのだ。
そうまでして最後部座席に座りたいのか。
しかしそこまで考えて、僕はあることに気付き愕然とする。
その夢は僕の初夢であった。
まあ一富士、二鷹、三茄子の夢が見られなければ一凄い髪型、二改造制服、三バスの最後部座席の夢を見るといいと言いますからね。
いや、ほんと、どうか正夢になりませんように。
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