アオイさん
あれは僕が大学生4年生のころの話だ。
僕は彼女と別れたてで、寂しい毎日を過ごしていた。
実家に帰ったときも遊ぶのは男友達だけで、全く女性っ気がない生活をしていた。
そんなとき、いとこの愛海ちゃんがうちに来た。
愛海ちゃんは僕より1つ年下の優しい女の子であり、とてもチャーミングな顔立ちをしていた。
愛海ちゃんは僕の様子を見かねて飲み会を企画してくれた。
そしてそこに愛海ちゃんがそこに連れてきた人の中にアオイさんがいた。
アオイさんのことは結構前から知っていた。
僕より年上で、小さなころに遊んでもらって嬉しかった記憶がある。
アオイさんは優しくて、僕は憧れを持っていたのかもしれない。
そしてこの飲み会に来るとは思ってもいなかった。
というのももうすでにアオイさんはとても大人びていて、こんな児戯に等しい集いには興味がないと思っていたからだ。
ところがそこで僕のアオイさんの印象は一転することとなる。
サワー系のドリンクを片手にもち、アオイさんはとても陽気に色々な話をしてくれた。
そして僕の愚痴も肯定してくれる聞き上手なところもあった。
アオイさんの同年代にはない落ち着きも僕を安心させた。
飲み会が終わる頃には僕はすっかりアオイさんの虜になっていた。
その飲み会のあともアオイさんと話したいと思いことはあったが、僕には大学生活があったので下宿先に帰ることになった。
「電話番号を聞いておけばよかったかな」と僕は少しだけ後悔した。
日常生活に戻ると僕はアオイさんのことを忘れた。
年末に実家に帰ると、愛海ちゃんの家に行く用事があった。
愛海ちゃんのお兄さんが本を書かれていて、僕の友達がそのお兄さんの本が好きだったのでサインを貰ってほしいとこのことだった。
僕は愛海ちゃんの家に着き、彼女と挨拶をしたあとで他愛もない話をした。
そしてそこにアオイさんがいることに気が付いた。
僕はすぐにアオイさんと話したいと思った。
アオイさんとの会話や何気ないやりとりを渇望していた自分に気が付いた。
そして僕は自分からアオイさんをバーに誘った。
そこでは僕はアオイさんに前の飲み会が楽しかったことを伝えた。
アオイさんは微笑んで、「嬉しい」と笑ってくれた。
そしてアオイさんこそが現在の池田のおじさんである。
この記事は当然のことながらフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。
※ 痒くなったら孫の手。