まる猫の今夜も眠れない

眠れない夜のお供に

今夜も眠れない

 

今夜も眠れない

こんばんは、まる猫です。

今夜も眠れません。

こんな夜はあの日のことを思い出します。

あれは僕が少年の頃、アメリカに家族でホームステイした夜のことです。

楽しい食事をしたあとで、僕と妹は与えられた寝室で寝支度を始めました。

「おやすみ」と言葉をかわし、ベッドに入り、しばらくすると妹の寝息が聞こえてきました。

そのとき、僕の視界にテーブルの上のあれが映るのです。

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そう、ピエロの人形。

なぜ寝室にピエロの人形が置いてあるのか不思議でした。

(そのご家庭だけかもしれません。)

ふだんは楽しいピエロも、夜に視界に入ると不安の象徴でしかありません。

すでに寝入っている妹をよそに、僕とピエロの戦いの幕が切って落とされたのでした。

僕はピエロの出方を伺いながら、「相手がこう来たらこちらはこう動く」というシミュレーションを繰り返しました。

対するピエロは僕の焦燥をあざけ笑うかのように、悠然と同じ姿勢を取り続けていました。

時計の秒針だけが暗闇に響きます。

戦いは膠着状態に陥り、部屋全体に朝の光が差し込み、僕の敗北が決定しました。

5時間38分 敗者 まる猫 (起床時間を迎えたため試合続行不可能)

あの日のことは今も忘れません。

今日もそんな夜です。

マトリョーシカをご存知でしょうか。

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人形の中に人形が入っているという例のあれです。

マトリョーシカは縁起物であり、家の人が集まる場所に置くとよいと言われています。

実は我が家には10年ほど前に親戚からいただいた本物のマトリョーシカがあります。

僕が直接いただいたわけではないので詳しいことはわかりませんが、多分高価なもので、見た目もとても綺麗で気に入っています。

親戚の方が厄除けにと買ってきてくれたもので、その気持ちがとてもありがたいなぁと感じています。

ただこのマトリョーシカさんは開きません。
(本場のマトリョーシカは開かないのでしょうか。)

そんな気に入っているマトリョーシカさんですが、人の集まる場所がよいということでリビングにおいてあります。

どんなに美しかろうが、人形があると僕は気になって眠れないので、それが寝室にないことは僕にとっては都合のよいことでした。

ところが今日はあまりに眠れないので、気分を変えて寝室ではなくリビングのソファーで寝ようとしたところ、マトリョーシカさんがおられたわけです。

そこからまる猫とマトリョーシカさんの戦いが始まりました。

吸い込まれるような青い瞳。

防戦一方のまる猫。

色々な考えが頭の中を巡ります。

「開かないけれど、本当にマトリョーシカなのか?」

「飛びかかってきたらどうかわせばいいだろうか?」

「そもそも言葉が通じるのか?」

このままアメリカの夜から続く対人形敗戦記録を伸ばしてしまうのかと思われた矢先でした。

起死回生の案が。

「違う部屋に持っていったらいいじゃないか。」

他人の家で勝手にレイアウトを変えるのは失礼と思い、ピエロは動かせなかったのですが、ここは自分の家。

ものを動かす権利はあるのです。

「すいません、マトリョーシカさん、一晩だけ隣のダイニングにいてもらっていいでしょうか。

その部屋にも人は集まりますから。」

そう心の中で言い訳を始めます。

最後の力を振り絞り、重い体を起こして、マトリョーシカさんを隣の部屋まで持っていきました。

まさかの物理的移動により、勝利のファンファーレが鳴り響きました。

「これで朝まで眠れるぞ」と思いソファーに横になり、天井を眺めていました。

しかし ............... 眠れない。

体は疲れているものの、意識は冴えていて、何かを感じ取ります。

誰かの視線を感じる。

あ、あれは!

「いや、2つあるんか〜い!」

もはや立ち上がる体力もなく、もう一体のマトリョーシカさんの監視のもと、まる猫は朝まで天井を眺めるのでした。

3時間17分 敗者 まる猫 (起床時間を迎えたため試合続行不可能)

 

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