髪・YOU・美男2
僕はモミアゲだけ白髪になる人間だ。
その白くなったモミアゲがヘルメットのあごひもの一部に見えるらしく、職場では陰で田舎の不良と呼ばれていたようだ。
田舎の不良はヘルメットを適当に被っているかららしいが、何と言うか壮絶ないじられ方である。
確証はないが職場で嫌われている可能性はある。
多分僕がトゥー・シューズなどを履いていたら100%画鋲を入れられるだろう。
そういう経緯があって僕は2ヶ月以上前に一念発起して白髪をなくすことにした。
しかし僕にはお金がないので床屋で髪を染めてもらうという選択肢はない。
もしも床屋で染髪なんてしてみた日には一週間はお昼ご飯は食べられない。
髪色は良くなるかもしれないが、顔色は悪くなるだろう。
そうなると必然的に自宅で白髪染めをするというチョイスしか残らなくなる。
次に僕は長時間座り続けることが出来ない。
実は映画もキツいくらいだ。
したがって本格的なヘアカラーよりも風呂場で行うカラーリンスがありがたい。
※ なお正確には間違っているかもしれないが、便宜上ここでは染髪剤をヘアカラー、白髪染めリンスをカラーリンスと呼ぶこととする。
次に大抵のカラーリンスは5分から10分ほど放置の時間を要する。
しかし風呂場での5分は子育て家庭の父親に算出するのは難しい。
僕の条件をまとめる。
①お金がないから床屋で染髪はできない。
②じっとしているのが得意ではないから座ってのヘアカラーは避けたい。
③風呂場でカラーリンスがベストだが5分も自由な時間などない。
何というわがままな人間だろうか。
そして僕はいくつかカラーリンスを試し、ようやく激推しを見つけることが出来た。
ルシード スピーディーカラーリンスである。
これは3分という放置時間で髪が染まっていくという優れものだ。
洗い流すのも簡単で髪もさらさらになる。
使おうと思っておられる方は自分に適しているかはきちんと確認してほしい。
とにかく僕にはベストフィットだった。
毎日風呂上がりに鏡を見て、持ち上げの白髪が目立たなくなっているのが嬉しかった。
奥様からも「白髪減った?」と言われるようになった。
職場でも陰で呼ばれる名前も田舎の不良から小太り爺さんに変わった。
これも白髪が目立たなくなったおかげである。
ただし職場では好かれていないこともはっきりした。
僕はしばらくモミアゲの白髪のストレスを感じることはなく生活していた。
ここで前回の記事と時間がつながる。
愚かにも僕はこれまでの努力を忘れて床屋に行ってしまったのだ。
顔の側面はトゥルントゥルンになっている。
黒くなったモミアゲはもう帰らぬ毛となった。
僕はそれに気付き膝から崩れ落ちた。
風呂場では今日もあの素晴らしいカラーリンスが僕の帰りを待っていた。